株式会社スノーボール

ASMLの躍進

近年、AI半導体の関連企業が世界中で注目されています。今回のコラムでは最先端の半導体製造装置メーカーであるASMLに着目します。ASMLはEUV(極端紫外線)露光装置のマーケットにおいて、実用レベルで100%のシェアを誇っています。EUV露光装置は、波長が13.5ナノメートルと非常に短い極端紫外線を用いて微細な回路をシリコンウエハース上に描画します。13.5ナノメートルを1本の髪の毛と比較すると数千分の1程度の細さになります。TSMC(台湾積体電路製造 )などの半導体受託製造企業もASMLの技術なしでは半導体の製造を行うことはできません。

ASMLはオランダのフェルドホーフェンという田舎町に拠点を置いています。私は同社について調べる前、本社はアムステルダムにあると思っていたため、少し驚きました。今年の3月25日時点で同社の時価総額は世界で20位に位置しています。同時点の世界時価総額上位25社を見てみると、そのうちの7社を半導体関連企業が占めています。3年前の2023年3月25日時点では、エヌビディア、TSMC、サムスン電子の3社に留まっていたため、この3年でAI半導体産業が大きく成長していることが分かります。

ASMLは製造業にも関わらず営業利益率が高いのが特徴です。EUV露光装置は1台で数百億円するため、マーケットの参入障壁が非常に高いです。ASMLの顧客も一部の企業に偏っています。現在ASMLのEUV露光装置を10台以上購入することができるのはTSMC、サムスン電子、インテル、SKハイニックスといった企業です。国内半導体メーカーのラピダスもASMLの露光装置を導入している企業です。

2000年以前は日本企業のニコンとキャノンが半導体露光装置のマーケットを席巻していました。これらの国内企業がマーケットシェアを大きく低迷させた要因はいくつかありますが、その1つとして技術戦略があります。ニコンやキャノンは垂直統合にこだわり、外部の部品メーカーとの連携が遅れました。それに対してASMLは早い段階で世界最高の部品メーカーと連携したため、より選択と集中が上手くいっていました。私は、オランダという小国ならではの利点があると思います。オランダのメーカーは製造の上流から下流までの全ての工程を担うリソースがないため、他国企業に頼る必要があります。また、オランダでは、多くの国民がマルチリンガルを操るため、グローバル戦略を取りやすいと考えます。

ゴールドラッシュの時代も実際に金を掘り当てた人よりもツルハシやシャベル、ジーンズ等の物資を提供した商人が一番儲かったとされています。AIの開発においても似たような事象が起きています。年初からAI開発に必要な半導体の設計や製造に関連する企業群の株価が上昇しています。

現在、多方面での米中覇権争いが激しさを増しており、AIの分野でも開発競争は激化しています。米AI新興アンソロピックのダリオ・アモデイCEOはアンソロピックのミュトスの性能に「中国勢が6〜12カ月後に追いつくだろう」と述べています。この6〜12カ月というのは見方によって大きさは様々ですが、米国にとって中国のAI開発は大きな脅威となっています。そのため、現状半導体の対中輸出規制を厳しくしています。対中輸出規制は米国だけに留まらず、ASMLのEUV露光装置も対象に含まれています。

年初からAI関連銘柄が大きく上昇していますが、株式市場全体で見てみると上昇しているセクターは非常に偏っています。マーケットは地政学リスク等の影響を大きく受けるため、いつの時代も長期的な目線を持つことが重要です。私自身も短期的なボラティリティに左右されるのではなく、むしろ味方につけることで淡々と投資を継続しようと思います。

※本記事において個別銘柄に言及することがありますが、当該銘柄の売買を推奨するものではありません。

上部へスクロール