日銀は先月3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定。実に2007年以来、17年ぶりの利上げに踏み切った。また同時にイールドカーブコントロール(YCC)の撤廃と上場投資信託(ETF)等リスク資産の新規買い入れの終了を決めた。
植田日銀総裁は記者会見で『賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきた』と大規模緩和解除について説明し、『当面、緩和的な金融政策が継続すると考えている』と追加利上げを急がないことを示唆した。世界で唯一マイナス金利政策をとっていた日銀がようやく金利の正常化に舵を切った形である。この政策変更により、日米金利差の縮小から円高を予想する向きは多かったが、その後も円安基調は継続。本日4月8日も1ドル151円台後半で推移している。
一方、米FRBは3月20日に開いたFOMCで政策金利を5会合連続で据え置いた。年内3回としていた利下げ予想を維持し、金融引き締めからの転換を判断する従来の姿勢を強調した。しかし米商務省が29日に発表した2月の米個人消費(PCE)物価指数は前年同月比2.5%上昇と1月から拡大し、FRBが目標とする2%から上振れている。ソフトランディングではなくノーランディングとの声も聞こえてくるが、想定よりも強い米経済にFRBのパウエル議長は、利下げについて『急ぐ必要はない』と述べた。FRBが最も恐れているのはインフレの再燃であるため、利下げを急がないのは当然ではあるが、利上げを急がない日銀とFRBは、全く逆の状況なのだ。
さて世界における相対的な米経済の強さを背景に米ドルは全面高となっている。今後もFRBの利下げペースが低下する可能性が高まっており、3月20日に政策金利を引き下げたスイス国立銀行や年4回の利下げが予想される欧州中央銀行(ECB)、利下げ期待の高まるイングランド銀行との金融政策の方向感の違いが意識されている。日米欧の中央銀行の金融政策の方向感は異なっており、今後の景気予測は非常に困難である。
また2024年1-3月期の商品市場は、石油や食料を中心に上昇。国際商品指数も1年7か月ぶりの高値を付けた。堅調な米国経済と原油高を背景にインフレ再燃への警戒感が高まっており、4月3日の米国10年債利回りは4.43%に上昇。約4か月ぶりの高水準で年初から約0.6%高くなっている。世界経済は、良くも悪くも米国次第という側面が強く、今後も米国の物価や金利、各種指標に注目が必要であるが、先行きを正確に予測することは不可能である。景気を予測して資産運用をするのではなく、景気がどうなるか分からないことを前提に資産運用に取り組むべきである。
今後の景気見通し(予測)を基に個別銘柄やテーマ型の投資信託を選んでいる投資家は多いように思うが、景気見通し(予測)が外れると大きな損失を被ることになる。話題のマグニフィセント7もマイクロソフトやエヌビディアが好調である一方でアップルやテスラは軟調に推移しており、明暗が分かれている。今流行りのものに投資をして良い結果を生むことは、とても少ないと感じている。
長期投資を成功に導くために、非常に難しいマーケット環境である今こそ、まずは資産配分をしっかりと考えることが重要である。その上で世界的な金利上昇で割安となっている債券には投資妙味があると考えている。『金利のある世界』における債券投資は、インカム(金利)とキャピタル(値上がり益)の両面でリターンを獲得することが可能である。不確実性が高まっている今こそ、債券を組み入れることでリスクを抑えるとともに、より強固なポートフォリオを構築することが可能となるだろう。
『金利のある世界』においては、住宅ローンなどお金を借りるときはもちろん、資産運用においても戦略が必要である。