株式会社スノーボール

現代のゴールドラッシュ、肥満症治療薬

皆様こんにちは本日からコラムを発信させていただくことになりました。 日経新聞や経済ニュースなどからインプットした情報や日々の生活での気づきなど、少しでも皆様のお役に立てるような情報を発信できたらと思います。 文章を書くことにあまり慣れていませんが、温かく見守っていただけたら幸いです。

さて、本日は世界の肥満人口の増加と今ホットな肥満症治療薬について取り上げます。 第一回のコラムからヘビーな話にお付き合いください。

WHO(世界保健機構)によるとBMI30以上の肥満の成人が世界で6億5000万人以上いるといいます。中でも米国は、人口約3億3000万人のうち4割がBMI30以上の「肥満」に該当し、肥満症治療への需要は大きいです。 米国の成人のカロリー摂取は世界最高の1日平均3900キロカロリーで、日本人の1.5倍も食べる計算だそうです。それが原因で、心臓病や高血圧になりやすく、肥満でない人に比べて年間の医療費がおよそ1860ドル(約28万円)高いです。「肥満」が米国のGDPを約7%押し下げているといわれており、大きな問題となっています。

そこで今、半導体やAIに並ぶ大きな投資テーマとして肥満症治療薬が注目されています。 製薬会社500社の時価総額は直近で23年末から7%上昇し、過去10年で最高になりました。 その中でも特に注目を浴びている2社が、デンマーク製薬大手のノボノルディスクと米製薬大手イーライ・リリーです。 2社の肥満症治療薬は「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれ、食欲を抑え満腹感を感じやすくすることで体重減につなげます。ペン型の注射器を自分で手軽に下腹部や太ももに打つ比較的痛みの少ない皮下注射で効果が得られ、従来の治療薬に比べて副作用が軽いことから急速に普及が進んでいます。研究によると、利用者の3割は体重が20%減ったそうです。

ノボノルディスクは2021年に糖尿病の治療薬を転用し開発した肥満症治療薬「ウゴービ」を実用化しました。その後、肥満症の治療だけではなくダイエット目的で入手する人もいて、米国や欧州で利用が爆発的に広がりました。2022年にテスラのイーロン・マスク氏もウゴービでやせたとX(旧ツイッター)に投稿したことで話題になりました。高級ブランド世界最大手の仏モエヘネシー・ルイヴィトンを抜き、欧州の時価総額首位に躍り出たことでまた注目されています。株価は大幅に上昇し、時価総額は23年末より3割高になりました。

2023年11月にはイーライ・リリーの肥満症治療薬「ゼプバウンド」が米食品医薬品局(FDA)から承認されました。注射は1週間に1回で保険適用なら高くても1カ月25ドル(約3800円)ほどで利用可能だそうです。イーライ・リリーの株価も肥満症薬への期待から1年で2倍超に増え、時価総額はテスラを上回り、世界時価総額ランキングで9位になりました。マグニフィセント・セブンと呼ばれる米国の主要テクノロジー企業7社がほとんどの時価総額「1兆ドルクラブ」入りにも期待が高まります。

ところで、肥満症治療薬の普及によって影響を受けている企業があります。 特にお菓子や食品メーカーは逆風を受けています。例えば、チョコレート大手のハーシーやクリスピー・クリーム・ドーナツの株価は2023年の後半から株価が上がりにくくなっています。 その一方で、追い風にのる薬品卸売の関連株は上昇しており、乗客の体重減により燃料効率を上げるとの見方から空運株にも期待が膨らんでいます。 米証券ジェフリーズはユナイテッド航空の乗客が平均4.5kg痩せれば、年間800万ドルの燃料費削減につながると試算しました。この数字には私もとても驚きました。

ノボノルディスクの「ウゴービ」は2023年3月に日本でも承認され、今年2月に販売開始しました。発売は世界9ヵ国目でアジアでは初です。利用者はBMIが27以上、かつ高血圧など2つ以上の肥満に関連する健康障害があること、またはBMIが35以上という規定があります。また、GLP-1には副作用があり、吐き気や嘔吐、下痢、低血糖や急性すい炎などが起こりうる可能性があり、使用をやめるとリバウンドすることも指摘されます。使用に関しては運動や食事療法の継続を前提とした上での投与など、適切な方法が求められます。

最後に、高齢化に伴いヘルスケア、医薬品などの分野は今後ますます有望なセクターと考えられます。ヘルスケア関連企業でどの企業がマーケットをけん引していくのか?人生において、最も大切な健康にかかわるだけに今後も市場規模が拡大していくことは確実視されます。景気の影響を受けにくいセクターでもあるため、引き続き長期的なトレンドとしてヘルスケア関連の企業に注目していきたいです。

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