株式会社スノーボール

tsmcの本質に迫る

TSMCは1987年にモリス・チャン(張忠謀)が創業した台湾に本社を置く世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)で、正式名は「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company」です。2026年半ば時点での時価総額は約2兆3000億米ドル(約370兆円)に達しており、アジア地域で圧倒的首位の企業価値を誇っています。ちなみに、TSMCに次ぐアジア第2位の企業は韓国のサムスン電子で5月にアジア企業として2社目となる時価総額1兆ドル(約150兆円)の大台を突破しました。

TSMCは自社ブランドの製品を一切持たず、他社が設計した半導体の製造だけを専門に請け負っています。スマートフォンやAI、自動車、家電など、現代のあらゆるテクノロジーを支える重要企業です。

現在、世界のファウンドリ市場(売上ベース)において、台湾企業の合計シェアは約70%を占めており、圧倒的な世界1位の座を維持しています。

台湾のなかでもその強さを牽引しているのがTSMCです。AIサーバーやスマートフォン向け先端チップの需要爆発により、ファウンドリ市場全体におけるTSMCのシェアは約70%で、2位のサムスン(約7%)に大差をつけて独走状態です。また、AIブーム(エヌビディアのGPUなど)を支える3nmや5nmといった最先端の超微細化技術に限定すると、TSMCのシェアは事実上ほぼ独占(90%以上)状態となっています。

TSMCが世界から必要とされる理由は、圧倒的な技術力と生産能力にあります。

アップルやエヌビディアといった大口顧客には、そもそもウエハーの製造に必要な設備や技術がないため、TSMCに供給してもらうしかありません。ちなみに、こうした工場(ファブ)や生産ラインをもたない企業をファブレス企業といいます。

アップルはリスク分散のために、過去に何度も2つ目、3つ目のサプライヤーを積極的に育てようとしてきましたが、TSMCには他社にはまねできない技術があるため、代替先の確保が非常に困難でした。他にも、もともと自社工場を持っていた企業まで、自社製造から撤退してTSMCに委託するようになりました。

TSMCの価格は、競合他社よりも高く設定されています。高い良品率・早い納期・手厚いサービスを提供しているため、それに見合うだけのプレミアム価格を設定できるようになっています。また、一流顧客としか取引していないため、受注も比較的安定していることが強みです。

AIの台頭により、GPUを生産するエヌビディアやAMDなどが直接的な恩恵を受けましたが、最終的に最大の受益者となったのはTSMCでした。さらに、半導体設計専業メーカーだけではなく、マイクロソフトやグーグルといった大企業まで、TSMCに発注しなければ戦力を増強できない状況です。

TSMCという企業を調べていくなかで、私は企業哲学がとても素晴らしいなと思いました。創業者のモリス・チャンは「TSMCを顧客自身の工場にし、顧客のニーズに照らして統治し、そして成功の果実を顧客と分かち合う」という目標を掲げました。

顧客が今、どんな技術やプロセスを必要としていて、どれくらいのコストなら受け入れられるかを丁寧にヒアリングし、顧客にとって信頼できる代理人となり、顧客が必要とするものを製造する。口で言うことは簡単なことですが、「顧客のニーズを満たすこと」を目標に掲げ徹底的に実践したことで、TSMCを成功に導きました。単なる製造業ではなく、サービス業として行ったことで、より高い価値を顧客に創造し、TSMCにも巨額の収益をもたらしたのです。

また、すべての企業が自分の目標を顧客の利益と一致させられるわけではありませんが、専業の工場しか持たないTSMCにはそれが可能です。自社製品や自社ブランドがある企業のファウンドリ事業は、顧客の製品の失敗が自社製品の販売に有利になる場合もあるため、顧客との間に利益相反が起きる事業でもあります。

TSMCには、成功する企業哲学と、顧客と信頼関係を築くことができるしくみが備わっており、大変感銘を受けました。今後の活躍にも注目していきたいです。

※本記事において個別銘柄に言及することがありますが、当該銘柄の売買を推奨するものではありません。

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