
日本の名目GDPが2026年にもインドに抜かれる見通しとなった。2024年にドイツに抜かれて3位から4位になったばかりであるが、来年には世界5位に転落することに。日本の低成長に加えて、近年の円安が影響しているが、世界における日本の存在感は低下していることは間違いなさそうだ。
そんな中、日本史上初の女性総理が誕生したことは、明るいニュースとなっている。しかしながら大谷選手の二刀流の大活躍に熱狂することと違って、政治やマーケットに対する熱狂は、いつの時代も注意が必要だろう。
20日の東京株式市場で日経平均は急騰し、終値は前日比1603円高の49,185円、過去最高値を更新した。同日、日本維新の会が自民党と連立政権の樹立に合意する方針を明らかにし、21日の首相指名選挙において高市早苗首相誕生が確実となったことを好感した。いわゆる高市トレードが再加速した形であるが、最近の日経平均株価の値動きの荒さには大いに違和感を覚える。長年にわたって低迷してきた日経平均株価が上昇することはデフレを脱却した証であり、それは間違いなく良いことであるが、手放しでは喜べないといった感じである。
世界的に不安定な経済および社会において高市新政権に対する期待は大きい。しかし『根拠なき熱狂』はいずれ収束し、期待は幻想となるかもしれない。個人的に女性初の高市総理には是非、頑張ってほしいと思うが、それとは別に高市トレードに関しては、冷静に見ておく必要があるだろう。
現在の世界経済とマーケット状況を正確に分析することは非常に難しい。トランプ大統領が暴走するアメリカとデフレスパイラルに陥った感のある中国との対立は激しさを増しており、今のところ収束が見えない。欧州の経済大国ドイツは、3年連続で景気の低迷に陥っており、フランスは政治の混乱、財政再建の遅れが懸念されており、S&Pによってフランス国債が格下げされている。日本を含む先進国の財政懸念は年々高まっており、これまで安全資産の代名詞であった先進国の国債さえも安全とは言えない状況である。
そんな中、最近のAI関連銘柄の急激な上昇をみるとAIバブル崩壊懸念が日増しに高まっているようにも思えるのだ。かつてウォーレン・バフェット氏は、ハイテク株に投資をしない理由について、自分が理解できないものには投資をしないとの姿勢を鮮明にした。ITバブルの際に相場に乗り遅れたバフェット氏に対して、『バフェットもついに終わった』という声もあったが、ITバブル崩壊後には『やはりバフェットは正しかった』と評価は一変した。
アメリカでは高所得者の消費が堅調であるが、トランプ政権の移民排斥などの影響から労働市場には偏重が見られている。もちろん政府による中央銀行の独立性を脅かすことはあってはならないのだが、トランプ政権においては何でもあり。FRBに対する執拗な圧力によってFRBの金融政策も少なからず影響を受けつつある。そのような状況下において投機熱は、ますます高まっており資産価格が上昇しているにもかかわらず、FRBの利下げや当局による金融規制緩和によって更に投機が後押しされているのである。
マーケットは、良いニュースには素直に反応し、悪いニュースにもいざとなればFRBが利下げしてくれるはずであるとの思惑で株価は押し上げられている。従来の株式や債券、不動産のみならず暗号資産(仮想通貨)にもマネーが集まっており、暗号資産の時価総額は約4兆ドル(600兆円)に上っている。リスクヘッジとしての投資対象である金価格も20日には1トロイオンス4398ドルの最高値をつけた。翌21日のニューヨーク先物は、前月比250ドル安1トロイオンス4109ドルまで急落したものの、年初から5割の値上がりは、過去の上昇局面と比較しても突出している。
特にAI関連の株式や一部の不動産、仮想通貨、そして金価格においてもバブルの様相を呈しており、この『根拠なき熱狂』の行方には注意が必要であると考えている。
さて、このバブルは、いつはじけるのだろう?残念ながら、こればかりは分からない。バブルは、なかなかはじけずに長く続く可能性もあるし、あるいは来月突然はじけるかもしれない。バブルがいつはじけるのか?は誰にも分からないが、マーケットの至る所でバブルが膨らみ続けていることは間違いないだろう。
これまでも何度も繰り返し申し上げているが、このような不透明かつ資産価格が割安とは言えないマーケット状況においては、インデックスファンドよりもアクティブファンドが有効だと考えている。インデックスファンドは、値上がりして時価総額が大きくなった銘柄への配分が大きくなるからだ。最近のAI関連や半導体関連銘柄の上昇によって、日経平均株価などもハイテク株や値嵩株の寄与度が大きくなっており、かなりいびつな配分となっている。市場平均に連動するインデックスファンドへの投資は、長期投資において良い戦略であるが、今のような激動の時代においては、リスクは高くなるかもしれない。
業績の良い企業であっても株価が割高となった場合には、売却して割安な企業に振り向けるなど変化に適切に対応してくれるアクティブファンドを保有することで、どこかでバブルが崩壊したときに大きな違いが出ることは間違いないだろう。