株式会社スノーボール

バフェット引退とアメリカの迷走

今月5月3日に開催されたバークシャー・ハザウェイの株主総会で投資の神様ウォーレン・バフェット氏(94)が2025年末での退任を発表した。

当社の社名は、ウォーレン・バフェット氏について書かれた『スノーボール』アリス・スローダー著が由来となっている。世界で最も尊敬される投資家バフェット氏が退任する日がいつか来ると思っていたが、2025年ついにその日が来たのである。

もちろんバフェット氏は、11歳から始めた投資をやめるわけではない。生きている限り、投資を継続するわけで経営の第一線から退くということなのだ。ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビュー記事によるとさすがのバフェット氏も90代になってから衰えを感じていたそうである。

1965年に繊維会社であるバークシャー・ハザウェイの経営権を取得後に徐々に投資会社へと会社の形態を変えていく。コカ・コーラやジレット、アメリカン・エキスプレス、ワシントン・ポストなどに集中投資を行なった。最近では日本の5大商社への投資も話題となっているが、バークシャーに投資される企業経営者は、敵対的買収など他の企業買収とは異なり、世界一の投資家バフェット氏に投資されることに対して誇りに感じるはずである。

さて1965年バフェット氏が経営権を取得後の60年間でバークシャーの株価は、約6万7000倍、年率リターンは、約20%。もし1965年にバークシャーに100万円投資していたら、670億円。1万円でも6億7000万円になったのだ。長年にわたる賢明な投資による複利効果もあり、バフェット氏は世界の歴史上最高の投資家となったのだ。私もバフェット氏に関連する書籍には、ほぼ目を通したが彼のような偉大な投資家は、後にも先にも現れないだろう。まさに唯一無二の存在であり、彼の真似をすることは誰にも出来ないが、彼の哲学や思考マインドを学ぶことは可能である。

そのバフェット氏が、投資において最も強い影響を受けた人物は、師匠であるバリュー投資の父ベンジャミン・グレアム氏である。グレアム氏によって書かれた『賢明なる投資家』は、今もなお投資において最も重要な名著であり、バリュー投資の基本原則について書かれている。グレアム氏の教えは、まさにバフェット氏の原点となっているが、その後、フィリップ・フィッシャー氏やバークシャーの共同経営者で盟友であったチャーリー・マンガー氏らの影響を受け、世界一の投資家としてのスタイルや地位を築いたのだ。

バフェット氏から世界中の投資家や経営者らは多くの事を学んだ。

人口が50万人にも満たないネブラスカ州の州都オマハで開催されるバークシャー・ハザウェイの株主総会には毎年4万人の人たちが世界中からバフェットに会いに来る。2022年には、オークションでバフェット氏とのランチの権利が1900万ドル、当時のレートで約25億円で落札された。バフェット氏の投資家としての人生は、アメリカの資本主義の歴史そのものである。

私自身もファイナンシャルアドバイザーとして、あるいは投資家としてバフェット氏から多くの事を学んだ。個人的にアメリカという国が好きな理由は、ウォーレン・バフェット氏やピーター・ドラッカー氏のような尊敬する偉大な人物の存在が大きいのだ。

一方で、歴史上最も愚かな大統領の愚行が連日報じられている。ハーバード大学などへの嫌がらせ、南アフリカ大統領への無礼な態度。アメリカの国家としての威信低下が進んでいる今『オマハの賢人』と呼ばれアメリカのみならず世界中で最も尊敬されるバフェット氏の引退は、アメリカの一時代の終わりを感じずにはいられない。

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