株式会社スノーボール

家計の金融資産と投資信託

今年から新NISAをきっかけに運用をスタートしたという方も多いのではないでしょうか。私の周りでも資産運用を始めたという友人が徐々に増えてきているように感じます。

しかしながら、2024年6月末時点で日本の家計の金融資産は2212兆円で、そのうち1127兆円はいまだに「現金・預金」に置かれたままです。これは全体の51%の規模を占めており、半分以上のお金が働いていないということになります。

日米の比較をみると、2024年3月末時点の家計の金融資産構成で「現金・預金」に置かれているお金は、日本が全体の50.9%、米国が11.7%で、「株式・債券・投資信託」で運用されているお金は、日本は全体の20.9%、米国が57.9%でした。日本の家計の金融資産の半分以上が「現金・預金」に置かれているのに対して、米国の家計の金融資産の半分以上は「株式・債券・投資信託」で運用されているのです。

かつて、1991年時点では、日本の個人の金融資産は1017兆円、米国の個人金融資産は2218兆円でした。このときの日本の人口は約1.2億人、米国の人口は約2.5億人でしたので、1人あたりの金融資産にはほとんど差がありませんでした。ところが、30年後の2021年時点では、日本の個人金融資産が2023兆円、米国の個人金融資産は1京3613兆円と大きく差が開いてしまいました。日本も2倍にはなっていますが、米国は約6倍まで資産が膨らんでいます。

30年間でどうしてこんなに差が開いてしまったのでしょうか?要因の一つは投資信託の残高にあります。

1991年から2021年の30年間で日本の投資信託の残高は41兆円から164兆円の約4倍、米国は174兆円から3105兆円の約18倍になりました。米国の個人金融資産が増えたのは、しっかりと投資信託を使って長期投資をした結果なのです。

他にも、米国では義務教育の時点で投資教育が活発だったことや、確定拠出年金の導入が日本より20年早かったことも理由にあると思います。また、日本の確定拠出年金のメニューとは違って、米国の確定拠出年金のメニューには元本保証型の商品はなかったため残高が増えたのです。

このように、家計の金融資産の半分以上がしっかりと運用され、増えたお金が消費にまわり、経済が活性化する良い循環ができているのも米国の強さの理由の一つだと考えています。物価の上昇に負けないよう、日本も米国のように「株式・債券・投資信託」の運用資産の比率をよりいっそう高めていくことが重要だと改めて感じています。

次に、投資信託について詳しく書いていきたいと思います。

投資信託は、複数の投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品です。

しくみとしては、「投資信託運用会社」で作られ、主に証券会社や銀行などの「販売会社」を通じて販売され、多くの投資家から資金を集めます。投資家から集めたお金は、資産管理を専門とする「信託銀行」に保管されます。運用会社は、集めたお金をどこにどのように投資するのかを考え、その投資の実行を信託銀行に指図します。そして、信託銀行は運用会社の指図を受けて、株式や債券の売買を行います。

投資信託はこうして「販売会社」「運用会社」「信託銀行」の3つの機関がそれぞれの役割を果たすことで成り立つ金融商品なのです。

投資信託の活用メリットは大きく分けて4つあると考えます。

1つ目は、安全性です。もし仮に販売会社・運用会社・信託銀行の3社が破綻したとしても、「投資信託法」という法律のもとで投資信託に預けているお金は分別管理されており、守られます。ちなみに預金においては「ペイオフ」というものがあり、もし仮に金融機関が破綻したとしても、1金融機関1預金者あたりの元本1000万円までと、その利息等が保護されます。

2つ目は、収益性です。世界のあらゆる資産に分散投資することでリターンの獲得を目指すことができます。

3つ目は流動性です。万が一お金が必要になったときに、商品によって多少異なりますが、5営業日前後で現金化することができます。

4つ目は税金です。個人で個別銘柄の売買をすることに比べて、税金を繰り延べられるという点で有利なのです。

以上のようなメリットがあることから、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や大学などの大きな機関は投資信託を活用しています。

最後に、現在国内には約6000本以上の投資信託がありますが、良い投資信託は極めて少ないと感じています。直近新NISAを始めたという方に何を買っているのか尋ねても、中身についてはよく分からないという方も多いです。新NISAを利用することは税金上のメリットはありますが、あくまでもツールであるということを忘れてはいけません。一番肝心なのは運用の中身です。

投資信託をどのように選べばいいのかは、また別の機会にお伝えいたします。

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