最近、生成AIという文字を新聞上で見ない日はありません。
生成AIブームのきっかけとなった対話型AI「ChatGPT」を米オープンAIが2022年11月30日に公開してから1年半以上がたちましたが、AI革命はまだ始まったばかりだと考えます。
これから生成AIが人々の生活や世の中をどのように変えていくのか注目していますが、今回は生成AIブームによる影響について考えてみたいと思います。
さて、生成AIは演算処理する際に膨大な電力を使うため、AIの活用や経済のデジタル化により電力需要は今後ますます増える見込みです。国内では2050年の需要は足元の1〜4割程度増えるとの試算があり、2050年代に日本の人口が1億を割り込む一方、電力需要は大幅に増える可能性があるのです。
電力需要の増大は、企業に一体どのような影響があるのか?「電気・ガス」で時価総額が1000億円以上の東証プライム企業を対象に2023年末から7月9日までの株価上昇率を見てみると、上位には地方電力が多く入っていました。首位は北海道電力、2位は九州電力、3位は東北電力です。現在、北海道では最先端半導体の製造を目指すラピダスの工場が建設中ですが、北海道に本社を置く建機や資材関連企業もそれに伴って追い風になっているといいます。
「電気・ガス」関連の企業だけではなく、データセンターの建設に関わる企業にも追い風です。例えば、九州・沖縄の建設業売上高ランキングでは、2023年は売上高50億円以上の企業数が148社と前年から13社増え、社数・売上高とも2001年以降で最高になりました。148社の売上高トップは九電工で23年3月期は前の期比3.2%増の3330億円でした。活発な設備投資やデータセンターの増設工事などが押し上げたのです。
建機大手の米キャタピラーも、一見AIとはあまり関連がないように思われますが、データセンターの建設需要ラッシュを追い風に業績が好調のため、いまや隠れたAI関連銘柄だと考えます。
他には、6月27日に日立製作所株の時価総額が約9年ぶりにソニーグループを上回ったというニュースがありました。データセンターの建設が進み、電力を効率的に制御する送配電事業が好調です。工場やインフラの顧客企業向けのAI導入支援も実績を出し始めており、日立は数十年来の構造改革を経て、「AI銘柄」への変貌を遂げているのです。かつてライバル企業であった東芝と明暗が分かれています。また、2020年にはスイス重電大手ABBから約1兆円で送配電事業を買収し、変圧器など送配電の機器類を手掛け、24年3月時点の受注残高は4兆7000億円にのぼります。データセンター建設ラッシュと太陽光や風力など再生可能エネルギーの増加を受けて進む送配電網の整備需要を取り込みます。時代を超えて構造改革を可能にする企業はやはり強いと思います。
このようにAI関連銘柄は今後もますます増えていきそうです。生成AIの普及に伴う半導体不足、データセンター不足、電力不足など新たな課題を解決できる企業に今後も注目していきたいです。
※当コラムは個別株の推奨はしておりません。