株式会社スノーボール

資産運用は、敗者のゲーム

先週木曜日の朝、ドジャース水原一平解雇の報道に激震が走った。個人的には、日産カルロス・ゴーン逃亡以来の驚きであった。この先、大谷がどうなるのか気になるがギャンブル依存症の水原一平の事件を未然に防ぐことは難しかっただろう。しかし、大谷の資金管理をするプロフェッショナルが存在しなかったことが、2次被害を引き起こし、問題を複雑にしたとすればとても残念である。大谷は世界的なスーパースターで素晴らしい人間性を持っていることは誰もが認めるところである。しかし野球以外の事に関しては、世間知らずの29歳であったとしても不思議はない。大谷のインタビューなどを見てると世界一稼ぐアスリートである一方でお金にはさほど興味がなく無頓着という印象を受ける。真相はまだ分からないが、お金に無頓着であるが故に今回の問題が起きた可能性も否定できない。日本では大谷に同情的な意見が大半であるが、アメリカでは大谷の資金管理の脇の甘さに関して厳しい意見も出てくるだろう。稼いだお金をどう管理するのか?あらためてファイナンシャルアドバイザーとしてお金の管理について深く考えさせられる週末であった。

さて本題である。チャールズ・エリス著の『敗者のゲーム』を読んだ方も多いと思うが、長年にわたって個人投資家のバイブルとして世界中で読まれている名著である。『敗者のゲーム』とはどういう意味なのか?

例えば、テニスというスポーツには、プロのテニスとアマチュアのテニスがある。プロのテニスは高度なテクニックの応酬でラリーが展開される。まさに数々のスーパーショットで得点を取り合うゲームなのだ。一方のアマチュアのテニスは、ネットに引っ掛けたり、サーブが入らなかったり、イージーミスの連発で失点をするゲームである。私もたまに趣味でテニスをするのだがアマチュアのテニスでは、とりあえず相手コートに返しておけば相手がミスをしてくれる可能性が高くなる。つまりプロのテニスは、得点を取り合う『勝者のゲーム』でアマチュアのテニスは、失点をする『敗者のゲーム』というわけである。

チャールズ・エリスは、膨大なマーケットのデータから資産運用は、『敗者のゲーム』であることを明らかにした上で個人投資家は出来る限りイージーミスをしないことが重要であることを説いている。『敗者のゲーム』を読んだことのない多くの個人投資家は、アマチュアのテニスプレイヤーのようにイージーミスによって失点を重ねているのだ。では資産運用においてイージーミスを防ぐにはどうすればよいのだろう?私たちファイナンシャルアドバイザーの仕事で最も重要なことは、未然にお客さまのミスを防ぐことである。初心者投資家であれベテラン投資家であれ、資産運用において感情を一定に保つことは難しいものである。マーケットの変動に感情が揺れ冷静な判断が出来なくなるのだ。

行動ファイナンス理論にもあるように資産運用において合理的に行動することはなかなか難しい。今流行りのテーマ型投信を買ったり、ユーチューバーの推奨する投資信託を買ったりする行為は、非常に危険である。NISAや確定拠出年金などをきっかけとして貯蓄から投資という流れが加速することは素晴らしいことであるが、前コラムでもお伝えした通り、投資はそんなに簡単ではない。優秀なビジネスパーソンが資産運用がうまいとは限らないし、ビジネスで成功することと資産運用で成功することは全く別物である。自分は、資産運用の事をよく分かっていると考えている人が実際には一番危ない。当社のお客さまの多くは、資産運用のことは良く分かりませんとおっしゃる方も多いが、そのような謙虚な方は、私たちのアドバイスを素直に聞いてくれる。結果的には、自分は良く分かっていると考えている人よりも、良く分かっていないけれどアドバイスを素直に聞いてくれる方のほうが運用成績は良くなると考えている。マーケットは、機関投資家などプロの投資家がしのぎを削っており、個人が安易な方法で売り買いして長期で勝ち続けることは不可能である。

資産運用は、『敗者のゲーム』であることを理解することは、資産運用を成功に導く最初の一歩である。

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