
先月、3年ぶりにニューヨークとボストンに2週間滞在しました。普段は指標や統計を通じて米国経済を追っていますが、現地で人と話してみると、数字だけでは分からないことが多くありました。今回はその2週間で感じたことをお伝えします。
羽田空港から約13時間かけてニューヨークのJFK空港に降り立ち、そこから滞在先にライドシェアのLyftで移動しました。その道中、Lyftのジョージア(旧グルジア)出身のドライバーの方に少し話を聞いてみました。彼は副業でこの仕事をしていて、多いときは1日で約500ドルを稼ぐと話してくれました。ニューヨークの物価は世界トップレベルに高いですが、仕事の機会も多いため、ジョージアからニューヨークに移り住んだそうです。
ニューヨークの物価は私が以前訪れた3年前よりも上がっていました。現在のニューヨーク地下鉄の一回当たりの基本運賃は3ドルです。3年前は2.9ドルでした。従来のメトロカードは廃止され、タッチ決済対応のクレジットカードなどが使えるため、乗車は非常に便利でした。
ニューヨーク・メッツの本拠地、シティ・フィールドでワシントン・ナショナルズ戦を観戦した際、ペットボトル水を買ったところ、支払金額は約1200円でした。私はこの金額に驚いていましたが、現地の方々はお酒やアイス、ホットドッグなど、我慢せずに購買していたため、米国の個人消費の底堅さを感じました。事実、米商務省経済分析局(BEA)が8月26日に発表した7月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年比3.7%上昇し、6月から横ばいになっています。
週末はボストン大学時代の米国人の友人と飲みに行きました。彼は現在就職活動中で、今のニューヨークの労働市場は厳しいと語っていました。米国では、日本のように職務経験がない新卒をポテンシャル採用することはほとんどありません。したがって、大学時代から長期インターン等の経験を積んだうえで他の応募者と競う必要があります。また、彼は実家に両親と住んでいると話していました。米国ではこれまで18歳を超えると親元から離れて暮らすことが一般的でしたが、今はインフレの影響で20歳以上の多くの若者が実家に暮らしているそうです。
米国で特徴的なのはチップ社会であることです。バーやレストラン等でサービスを受けた場合、チップを支払う必要があります。標準的な選択肢は18%、20%、22%、25%です。支払額が増えるほど、チップの負担も重くなります。今回私は最低選択肢である18%のチップを支払いましたが、3年前は任意で10%のチップを支払い、店員と揉めたことも多々ありました。バーやレストラン等でチップを支払わない場合、店員は食い逃げに近いようなリアクションをすることも多いです。
以前から、なぜ飲食店の店員は顧客ではなく、雇用主を責めないのか疑問に思っていました。私が大学時代に毎週通っていたボストンのバー、The Corner Tavernの常連のアダムさんにそのことについて質問してみました。
アダムさんによると飲食店の店員はチップなしでは最低賃金以下の給与を受け取ると教えてくれました。これは資本主義の象徴で、店のオーナーが一番得をする仕組みになっているそうです。仮にアダムさんがCorner Tavernで普段より少ないチップを支払った場合、もう二度とバーには戻って来られないと語っていました。それだけチップを支払うことは米国社会において重要なのだと感じました。
米国の主要都市では貧富の格差が激しく、ホームレスから富豪まで見受けられます。個人的に今の米国はある程度お金に余裕があれば居心地が良いと思います。街は多様性に富み、刺激的です。私は米国のスモールトーク(世間話)の文化が好きです。地下鉄やバーなど色々な場所で初対面の人たちと会話をすることは一般的です。私も大学時代の4年間米国に住んだことで格段にコミュニケーション能力が向上したと思います。
近年、トランプ政権などの影響で以前よりも米国に対して距離を感じる人も増えてきました。しかし、実際に現地の米国人と会話し、時間を過ごしてみるとほとんどの方がフレンドリーで街は刺激に満ちていました。
今回の2週間の滞在でニュースや新聞では分からない米国経済の情報を収集することができました。米国にも様々な欠点はありますが、改めて世界経済を牽引していると感じました。直近の世界時価総額ランキング上位10社のうち、8社が米国企業です。世界各国から優秀な人材が集まり、圧倒的なイノベーション力を誇っています。また、日本人と比較して現状維持に満足する人は少ないです。いつ解雇されてもおかしくないため、普段からリスクを取り、変化に適応していく能力が問われます。この変化に適応する能力こそがこの国の経済を支えている1つの要因だと感じた滞在でした。