株式会社スノーボール

変化への対応

2026年が幕開けした直後の1月3日、アメリカによるベネズエラ攻撃は、まさに映画のワンシーンのようで現実のものとは思えないものであった。まさに現在の激動する世界、不確実性の高い世界を象徴しているようであった。その後もトランプ大統領の暴走は止まらない。1823年にモンロー大統領が提唱したモンロー主義に自らを見立てドンロー主義と命名し、米国第一主義と西半球への介入を正当化している。グリーンランドを巡ってデンマークや欧州同盟国との亀裂は深まっており、世界はロシアや中国の脅威以上にトランプ大統領のアメリカが世界における最大の脅威となっている。ロシアに融和的な態度をとり、同盟国に対しては喧嘩を仕掛けるなど、前代未聞の出来事が頻発している。トランプが2度目の大統領就任した時点で『世も末かもしれない』と感じていたものの、まさかこんなに酷い世界になるとは想像以上である。一人の愚かな老人がここまで世界を大混乱させたことは、あっただろうか?少なくとも私の知る限りでは、初めての経験である。

日本は、日米同盟という名の下でアメリカに依存することは、もはや不可能と考えた方が良いだろう。国や企業などの組織、個人は、国際秩序が大きく変化する中で、この変化に対応しなければ未来はないだろう。

さてダボス会議でのカナダのカーニー首相の演説が話題となっており、私も英文と日本語で全文を読んでみた。カーニー首相は、経済学者であり、過去にはカナダ銀行総裁やイングランド銀行総裁も務めた人物であるが、『世界経済は破裂の真っ只中にある』『大国に迎合しても安全を買うことはできない』とした上で中堅国による連携の重要性を訴えた。名指しこそ避けたものの明らかに批判されたトランプ大統領は、この演説に激怒し、いつものようにカーニー首相に無礼な言葉を浴びせ、関税を100%かけると脅している。しかしながら今回のダボス会議でカーニー首相こそが真のリーダーと感じたはずであるし、混迷する時代の道筋を示してくれた素晴らしい演説であった。

さて日本のリーダーは、過去も現在もトランプ大統領の顔を伺ってペコペコするだけで、カーニー首相のようなリーダーシップを発揮することはなかった。とても残念であるが、カーニー首相の指摘するように、今後、日本はアメリカに迎合しても安全を買うことは不可能である。

激動する世界において、これまで以上に政府の役割は大きいことは間違いないのだが、日本政府に確固たるビジョンと覚悟はあるのだろうか?選挙に勝つことが目的ではなく、混迷の時代に日本を正しい方向に導くことが大切である。日本国、政府、企業などあらゆる組織、個人も世界の大きな変化に対応しなければならない。そんなことを考えていた矢先に、かつて在籍(2002年11月-2007年7月)していたプルデンシャル生命の不祥事事件のニュース報道を目にした。

事件の詳細について正直なところ分からないが、信用で成り立っている金融機関としては致命的な事件であり、断じて許せないものである。私自身も個人と法人でプルデンシャルと保険契約しており、契約者としても残念な事件である。但し、私自身は担当ライフプランナーを信用していること、保障内容を理解し、納得しているため、解約を考えていない。ただ一般の契約者心理から推測すると今回の不祥事によってかなり多くの解約が発生するのではないだろうか。

今回の事件とは無関係に私自身のプルデンシャル生命に対する率直なイメージを以下に述べたい。

多くのライフプランナーは金融の専門家ではなく、保険販売の専門家というイメージである。殆どのライフプランナーが考えていることは、どうやって保険を販売するのか?ということである。かくいう私自身もそうだったが、保険を販売することがライフプランナーの仕事なのである。床屋が髪を切るのと同じである。生命保険は誰にとっても必要なものであり、保険販売も大変重要な仕事である。問題は、生命保険の販売において顧客に適切な保障を提供しているのか?ということが問題である。

ライフプランナーの報酬体系は、3年目以降は完全歩合制で保険を一定期間販売しないと、生活が困窮するため、特に最初の2年は営業所長から毎週、業績をあげることを求められることになる。そんな厳しい職場環境であるにもかかわらず、形式上は会社員(厚生年金に加入)という形になっている。私自身も不思議に思っていたが、会社員ではなく実態は個人事業主の集合体である。交通費や携帯電話など活動費も自費で負担しており、年収にかかわらず全員確定申告をしている。私自身、厚生年金と健康保険に加入していることを除けば、会社に雇用されているという感覚はなかった。当時は営業用のパソコンも自費で購入していた。さすがに今は会社でパソコンを準備してくれるそうであるが、ライフプランナーの待遇などは20年前とあまり変わってないようである。

そして、今も昔も金融知識に乏しいライフプランナーが、金融知識のない顧客に生命保険を販売するということが、繰り返されていると思う。プルデンシャルには少数であるが優秀な人もいるが、殆どの人は保険販売のプロであって、金融のプロとは言い難い。私自身も真の金融知識を身に着けたのは、プルデンシャルを退職した後であったことは間違いない。ライフプランや生命保険の知識は、とても重要で今の仕事にも役に立っているが、それだけで顧客の課題を解決するには十分とは言えないのである。

当社は現在、保険代理業を行っていないが、日常的に生命保険に関する相談が多数寄せられ、その都度、保険分析をしているが殆どの人が保険に過剰に入りすぎていると感じる。金融資産のない若い人には定期保険(死亡保障)が必要だと思うし、富裕層の相続対策などに終身保険があると効果的であるが、資産形成(資産運用)においては生命保険ではなく、投資信託等を活用することが王道であろう。

世の中の大きな課題は、早期死亡リスクではなく、長生きのリスクに変わったことをドラッカーは、『ネクスト・ソサエティ 2002年刊行』で指摘している。生命保険は、大切であり、必要なものであるが長生きのリスクに対応するために生命保険商品(年金商品)を活用することは、コストが高く流動性の観点からも非効率である。顧客のライフプランの課題を生命保険だけで解決することはそもそも不可能である。結果的に顧客に必要のない保険を大量に販売し、高い数字を挙げた人を称賛するような独特なカルチャーが出来上がったことは間違いないだろう。

もちろんプルデンシャルだけではなく、保険業界全体でそのような傾向があると感じている。また証券業界、銀行業界も同様に顧客の利益よりも第一に会社の利益を考えているように思う。

プルデンシャル生命の経営陣は、過去の生命保険販売の成功モデルに固執し、ドラッカーの指摘した世の中の変化に対応することが出来なかったと思う。社長が交代して、ライフプランナーの報酬体系を変えるそうであるが、根本的にライフプランナーの営業力に依存する今のビジネスモデルを変えることは不可能だと思う。本当に優秀な人は、そもそもプルデンシャルの看板など不要である。むしろ今回の事件でプルデンシャルの看板がマイナスに働くのであれば、退職して保険代理店として独立を目指す人もいるかもしれない。

プルデンシャルには友人や先輩ら素晴らしい方々がいるので、心苦しい面もあるが、ビジネスモデルが今の時代に対応出来ていないことは、私の率直な意見である。

2026年は、あらゆる組織や個人に変化への対応が求められる年になりそうである。

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