
トランプ関税の影響で、世界的な貿易の分断が進んでいます。
フィリピンとアラブ首長国連邦(UAE)がTPPへの加盟を申請し、韓国も申請の検討に入りました。米中対立で保護主義が世界に広がり、日本を含むTPP加盟各国は欧州と並び自由貿易を守ろうとしています。
株式市場にも変化が出てきています。かつての米国1強、ドル独歩高という文字も目にしなくなりました。世界の中で、米テック企業7社のマグニフィセント・セブンが相場をけん引していた時期は過ぎ去り、現在はマグニフィセントセブンとその他の銘柄の上昇率の差がどんどん縮まってきたのです。米国株だけではなく、幅広い国やセクターで上昇する銘柄がみられました。
以下、11月に注目したニュースをまとめました。
・オープンAIはアマゾンと5.8兆円のクラウドコンピューティングの調達契約を結んだ。
・アルファベットはAIインフラ投資へ3.8兆円の社債を発行した。(オラクル・メタに続く)
・スタバは中国事業の6割を売却し、現地ファンドと再建を目指す。
・ビットコインが急落し、一時10万ドルを割った。
・日経平均1284円安。3銘柄(SBG アドバンテスト 東京エレクトロン)で1000円押し下げ。
・1~9月の米企業の人員削減数は95万人に拡大した。AIによる効率化を見越す。
・テスラはイーロン・マスクCEOに1兆ドル(約153兆円)規模の巨額報酬案を承認。
・10月の米企業 政府機関の人員削減が前年同期比2.7倍の15.3万人で2003年以来の高水準。
・4~9月期決算を発表した非製造業の7割が最終増益に。エンタメ、レジャー、ITが好調。
・NYダウは4日で2163ドル安となった。4月以来の下げ幅。AIへの過剰投資に懸念。
・マイクロソフトとエヌビディアが米アンソロピックに2.3兆円投資することを発表。
・中国政府が日本産水産物の輸入を事実上停止。
・エヌビディアの8-10月期決算は売上高が前年同期比62%増、純利益は65%増。
・対ドルの円相場は一時1ドル157円台前半に下落。長期金利は1.8%に上昇。
・米小売り大手ターゲットは4四半期連続減収。インフレで非必需品の買い控えが広がる。
・アルファベットの時価総額が7年ぶりにマイクロソフトを上回り、世界時価総額ランキング3位に浮上。
・中国の長期金利が初めて日本を下回った。
・ラピダスは2027年度に北海道千歳市で2棟目の工場に着工する。
・ホンダが日本車「3強」脱落。インドで快走のスズキが2位に。
・インド株が最高値を上回る。トランプ政権による50%の高関税でインドの経済改革が加速。
・米オープンAIがChatGPTを公開して3年が経ち、企業価値は公開前の25倍(約78兆円)に。世界最大のスタートアップに成長した。
・エアバスの主力航空機「A320」で異常が生じ、1000機の機器交換が必要になった。
・米オラクルの株価が9月の最高値から4割下落した。AI銘柄の選別が進む。
・米マイクロン・テクノロジーは広島県に新工場を建設する。2026年5月に着工予定。
・11月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2で8カ月連続で好調・不調の境目である50を下回った。データでさかのぼれる2005年以降で最長。
11月も様々なニュースがありましたが、全体的にはやはりAIの話題が多かったように思います。市場ではAIバブル懸念が強まり、ナスダック総合株価指数は1.5%安と8カ月ぶりに下落しました。
マグニフィセント・セブンの中でも明暗が分かれました。月間で上昇したのはアルファベットとアップルの2社で、ともに最高値圏で推移しています。アルファベットは最新の生成AIモデル「Gemini3」が高く評価され、アップルは最新の「iPhone17」が好調です。
それから、日中の長期金利の逆転というニュースにも注目しました。
データでさかのぼれる2000年9月以降で日中の長期金利が逆転するのは初めてです。日本の10年物国債の利回りは一時1.84%まで上昇した一方、中国の10年物国債利回りは1.83%にとどまりました。日本は高市早苗政権の財政拡大方針を受けて金利が上昇していますが、中国は不動産バブル崩壊やゼロコロナ政策の後遺症から抜け出せておらず、異なる方向に動いています。
日本の長く続いたデフレに、今度は中国が直面しているのです。2010年に名目GDPで日本を抜いて世界第2位となり、中国経済の実質成長率は10%を超えました。その後、徐々に成長率目標を引き下げ、現在は5%前後まで目標値が下げられています。国際通貨基金(IMF)は、2025年のGDP増加率を4.8%、26年を4.2%と見込んでいます。
このまま中国で消費者の節約志向が続き、企業や消費者の行動が変わらなければ、売れ残る製品は安値で国外にあふれ出し、世界の「自国産業」の競争力低下につながる懸念があります。
このように、世界経済はいつの時代も良いことばかりではありません。ただ、世界経済が良いときも悪いときも、その時々で柔軟に変化に対応し成長してきた企業も存在します。
足元は株価が大きく上下するボラティリティの高い展開が続いていますが、短期で勝とうとするのではなく、長期的にインフレに負けないよう安全に資産を管理するという考えの方が結果として上手くいっている方が多いです。私自身も、当初決めた資産配分で運用を継続していますが、相場が下落したとしても不安になることはなくなりました。同じように将来に対して少しでも不安がなくなったという方を来年以降も増やしていきたいです。