株式会社スノーボール

目先のノイズに振り回されるな

タイトルは過去の自分に投げかけたい言葉です。

以前、私が証券会社に入社して1年が経とうとする2020年2月から3月にかけてコロナショックが起こり、株価は大きく下落しました。当時、新入社員だった私が経験した初めての暴落です。新規開拓でお客様になってくださった大切な方々のお金を預かったばかりでした。

過去に経験したことのない事態に不安は募り、頭ではいずれ相場が回復すると理解しているつもりでも感情はついてこず、多くの情報を取り入れては日々の値動きに一喜一憂しておりました。そんなときに、帰宅するとファイナンシャルアドバイザーの経験が長い父に「一喜一憂するな。日々の株価の上がった下がったは天気予報で晴れか雨かと言っているのと同じだ。」とアドバイスをもらい、短期的な株価の値動きや過剰な情報は長期投資においてはノイズにすぎないことを学びました。

それと同時に、長期投資において下落はつきものであり、目標を定めたら一貫した姿勢を貫く忍耐力も必要であること、また、良いポートフォリオであれば日々の値動きも気にならなくなることに気づいたのです。

新NISAをきっかけに投資を始めた方は非常に多いですが、まだ投資経験年数が短いです。そういった方々がいざ暴落を経験すると以前の私と同じような心境になるかもしれません。ですが、そんな時こそタイトルの「目先のノイズに振り回されるな」というメッセージを思い出していただきたいです。

毎日ニュースやSNSでは多くの情報が溢れかえっており、それらを容易に取り入れられる便利な時代になりました。ですが、知識が豊富であっても間違った投資行動をとってしまうケースはいつの時代も後を絶ちません。投資が難しいと言われている理由の一つはここにあるのだと感じます。

マクロ経済や政策トレンドは株価を左右しますが、長期的な企業収益にほとんど影響を及ぼしません。そんな目先のマクロトレンドを予想することは、賢明な投資アプローチとは言えないのです。

むしろ、投資家は市場の方向性について考えるよりも、ポートフォリオをマクロ面のリスクから守ることを重視すべきです。政策や金利、為替、インフレがどうなろうと好業績を達成することができる企業を発掘すること、安心できるポートフォリオの状態にしておかなくてはなりません。

なぜ毎回のコラムで分散投資の重要性やリスク管理、ポートフォリオバランスについて言及しているのかということなのですが、今の状況は個人的には少し警戒が必要な局面だと感じているからです。

例に挙げますと、オープンAIが生成AIの性能を高めるべくエヌビディアと米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、米ブロードコムといった今勢いのある企業から半導体を調達しています。

10月13日に発表したオープンAIのサム・アルトマンCEOが計画するAI投資の規模は総額1兆3000億ドル(約200兆円)にのぼりますが、これはオープンAIの企業価値(約5000億ドル)の2.6倍だそうです。

赤字経営が続くオープンAIは半導体企業の資金力を活用してAI半導体の投資に充て、それと同時にエヌビディアからは最大1000億ドル(約15兆円)の投資を受け、AMDからも発行済み株式の約10%を受け取る(合計すると両社から約20兆円の資金を得る計算)取引をあみ出しました。

このような取引は両社に恩恵があるかと思いますが、オープンAIを軸に一部の企業間で巨額資金が循環する状況は、AIバブルにつながる可能性があり楽観視できません。

近年、新NISA制度の後押しもあり、国内においてインデックスファンドに資金が向かう構図が続いていますが、一部の銘柄が本来の期待以上に膨らんでしまうと、何かのきっかけで大きく崩れる危険性もはらんでいるといえます。

「〇〇にインデックスファンドを買うと良いよと言われて買ったが、自分はその中身を知らない。」という声も聞く機会が増えてきました。インフレの時代、預金に置いていてもなかなか増えないため、お金の置き場所を変えようという考え自体はとても良いことと思いますが、その後を真剣に考え取り組んでいる方はまだまだ少ないと感じます。

インデックスファンドが良い悪いということではなく、リスクを理解したうえで投資をしているか、その人にとって適切な保有比率であるか、周りの噂話(ノイズ)に振り回されていないかという点には注意が必要だと感じます。

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