
8月22日の米国株式市場でNYダウは大きく上昇し、終値4万5631ドルと最高値を8か月ぶりに更新した。ジャクソンホール会議の講演でFRBパウエル議長は、利下げを『慎重に進める』と語った。雇用の下振れリスクを強調したことで、9月の利下げ実施への期待が高まった形である。
21日の国内債券市場では新発10年国債の利回りが一時1.610%まで上昇し、17年ぶりの高水準をつけた。日経平均株価も連日、最高値圏で推移しており、米関税政策による企業業績の過度な下振れ懸念が後退し、日銀も利上げに動きやすくなるとの思惑が働いている。
トランプ政権のFRBに対する圧力は、アメリカの未来にとって好ましくないことは明らかである。もはやトランプの暴走を止める人は見当たらず、結果的にトランプを止められるのはマーケットだけなのかもしれない。4月2日の相互関税を発表した直後に米国市場は株式、債券、為替のトリプル安に見舞われた。マーケットが大きく反応すると政策を変え、基本的なポリシーや哲学もなく、ただただその場しのぎの後追い政策によって世界中を混乱させている。
アメリカ株式会社の社長は、危険人物であり、その取り巻きもイエスマンで固められており、とても危険な状況である。このトランプ政権の政策が世界経済全体を良くすることはないため、どこかで世界のマーケットには調整局面が訪れるだろう。1989年ベルリンの壁が崩壊後に始まったグローバリゼーションは終焉し、新たな世界が始まろうとしている。現時点では、トランプの暴走やパフォーマンスばかりが目立ち、今後どのような世界になるのか予測は非常に難しい。
ウォールストリートジャーナルに『家を買わず転職せず 米国人の流動性が低下』という記事があった。以下に要約すると
『米国人は何世代にもわたって都市間、州間を移動してチャンスを追いかけてきた。1950年代から60年代にかけては毎年、米国人の約2割が移動するのが当たり前だったが、以降徐々に低下し、2023年には7.8%と1948年以来最低となっている。新しい家や新しい都市に移る人の割合が史上最低水準に低下。企業には、これから社会人人生を始めようとしている初級従業員向けの仕事が以前ほどない。仕事に就いている労働者は今の職場にしがみついている。この変化の理由はさまざまであるが一つは、高齢化。高齢者は若い人ほど移動しない傾向にある。稼ぎ手が2人の世帯で暮らす米国人も増えており、2人が働いていれば移動はより難しくなる。』
毎日、トランプのニュース報道だけを見ていると物事の本質が見えにくくなってしまうが、米国人の流動性が低下している記事から、これまで世界経済を牽引してきたアメリカの厳しい未来が浮かび上がってくる。世界経済のエンジンとなってきたアメリカ経済の減速は、世界経済の減速でもある。
マグニフィセント・セブンに代表される豊かなアメリカと物価高で生活が苦しいアメリカ。米国の凋落とトランプの政策によって、これまで以上に格差が拡大している。トランプ政権は、岩盤支持層である貧しい白人労働者層の味方であるように振舞っているが、実際はトランプ政策によって、彼らはより貧しくなり、シリコンバレーやウォール街の金持ちは、より金持ちになっていく可能性が高い。実に皮肉な話である。
さて株式市場は、経済を映す鏡と言われるが、時に間違った方向に動くこともある。ITバブルやリーマン・ショック、日本のバブル崩壊時などがそうである。昨今のAIブームを受け、AI関連や半導体セクターにおいて一部バブルを指摘する声もある。私はバブルを事前に予測することは困難であると考えるが、世界経済の減速傾向、FRBの利下げ期待から株価が最高値圏にある今は、マーケットの調整がいつおきてもおかしくない状況である。
但しマーケットの調整の有無に関わらず長期投資においては適切なポートフォリオを維持することが大切である。つまり私の予測も含めて、専門家と言われる人々の予測は殆ど当たらない。よって予測に基づいて投資をすることは、予測が外れたときに大きな損失となってしまう。
人の予測は当たらない、広義のマーケットは長期的には上昇するという前提に立って、投資判断をしていくべきである。いつもお客様にお伝えしていることであるが、日々の値動きに一喜一憂することなく投資を継続することこそが最善の方法であると考えている。