株式会社スノーボール

相続時精算課税制度

2025年3月末時点で、日本の家計の金融資産は2195兆円、そのうち全体の51%の1120兆円は未だに「現金・預金」におかれたままです。そして、「現金・預金」の半分以上が退職金を受け取った高齢者の方々の資産です。

高齢化も一段と進み、「団塊の世代」と呼ばれる方々が全員75歳以上になりました。(※「団塊の世代」とは1947年から3年間の「第一次ベビーブーム」に生まれた方々のことです。)この75歳以上の後期高齢者の方々が2100万人あまりに上る見通しです。

日本では少子高齢化の影響で高齢者の方々に資金が偏っており、GDP(国内総生産)がなかなか伸びないことが問題となっています。2024年の名目GDPは米国が世界最大で29兆1849億ドル(約4243.5兆円)、2位の中国が18兆7480億ドル、3位のドイツが4兆6585億ドルでした。日本は残念ながら4位に沈んでしまい、4兆262億ドルでした。日本は2000年代までは世界2位の経済大国でしたが、2010年に中国、2023年にはドイツに抜かれてしまいました。

さて、『DIE WITH ZERO』という本はお金の「貯め方」ではなく、「使い切り方」に焦点を充てたこれまでにないお金の教科書としてベストセラーとなりました。

貯めるのは得意だけれど、使うことが苦手な日本人にとって人生観がガラリと変わるような一冊だったと思います。例えば、一刻もはやく「経験」にお金を使う、子どもには死ぬ「前」に与える、45〜65歳には資産を取り崩し始める、ゼロで死ぬなど。

若いうちから経験にお金を使うことや生前贈与を開始することは大変勉強になりましたが、実際問題、平均寿命が伸びていて何歳まで生きることができるか分からないので、ゼロで死ぬということはなかなか難しいと思います。

そこで、相続時精算課税制度の活用が有効だと考えています。

年110万円以内の贈与なら非課税になる基礎控除が、2024年1月に相続時精算課税に新設され、生前贈与に積極的に使われるようになりました。

これを活用するには、贈与の年の1月1日時点で60歳以上の父母や祖父母などから、財産の贈与を受けた18歳以上の子または孫が、その贈与があった翌年の2月1日から3月15日に所轄税務署に「相続時精算課税選択届出書」と添付書類(受贈者や特定贈与者の戸籍の謄本または抄本など)を提出する必要があります。

贈与者が生きている間に毎年110万円以内の基礎控除に加え、累計2500万円の特別控除内であれば何回贈与を受けても贈与税がかからないのです。(この枠を超えた分につきましては、一律20%の贈与税がかかります。)ただし、相続時精算課税制度を選択した贈与者から贈与を受けた財産の価額については、贈与者の相続発生時の相続財産の価額に持ち戻して相続税の計算を行います。

この制度の活用メリットといたしましては、2500万円の特別控除があり、超過分の贈与税の税率が一律20%になること、早期に財産を贈与できること。それから、値上がりが予想される財産を贈与すれば相続対策にもなり、相続争いを防ぐこともできます。さらに、今までの暦年課税は生前贈与により取得した財産が相続財産に加算される期間を、相続開始前3年以内としていましたが、7年以内に延長されました。一方で、相続時精算課税制度は、暦年贈与のようにさかのぼることはありませんので、この制度を活用される方が急激に増えているといいます。

逆にデメリットといたしましては、一度選択すると暦年課税が使えなくなることや相続時に相続税が発生することがある、不動産の生前贈与はコストが増える、税制改正があると大きなデメリットにつながる可能性などもあります。

ですので、実際に活用される場合はご自身のケースに合わせてメリットとデメリットをよく理解した上で進めることが大切です。

このように2024年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わりましたが、意外と知らなかったというお声をいただきましたので、今回はこちらのテーマを取り上げました。

最後に、日本では「老老相続」といって相続させる側とされる側の両方が高齢であるケースが増えています。認知症になってしまうと必要なときに必要なお金を動かすことができません。

こういったお話をご家族でする機会はなかなかないかと思いますが、贈与者も受贈者もお互いにお元気で体力があるうちにしっかりと話し合いをし、このような制度を活用することで資金を有効活用することが可能になると思います。

来月はお盆もあり、ご家族で集まる機会があるかと思います。

これを機にご家族で話し合い、将来の備えについて考えてみてはいかがでしょうか。

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