
日本人で初めてイチローがメジャーリーグの殿堂入りを果たし、約20分の英語によるスピーチを行った。完璧主義者のイチローらしく入念にスピーチの準備をしたと思うが素晴らしい内容であった。亡くなった長嶋茂雄さんや世界のホームラン王である王さん、現役では世界トップの大谷選手など超一流の野球選手の言葉はとても説得力があるし、人々の心を動かし感動を与えるものである。
それとは対照的にトランプをはじめとする最近の政治家らの言葉は、全く信用できないばかりか、実に胡散臭い。超一流の野球選手が真のプロフェッショナルであるのに対して、政治には真のプロフェッショナルと言える人がなかなかいない、経済の事も良く知らない芸能人でも知名度さえあればなれる不思議な世界。昔から政治家は、なんか偉そうにしているが、個人的にはリスペクトの対象ではない。選挙のプロかもしれないが真のプロフェッショナルとは程遠く、アマチュアの寄せ集めに過ぎない集団。残念ながら、日本の政治を見ているとそのように感じる次第である。
さて記録的な猛暑が続く中、世界経済そして日本経済もなお混沌とした状況が続いている。
22日(米時間)トランプ大統領は、自身のSNSを通じて日本と関税交渉で合意したと発表。日本に対する相互関税を15%とし、日本がアメリカに5500億ドル(約80兆円)を投資するという。またコメなど農産物や自動車の市場開放を約束したことも明らかにした。交渉を担当した赤沢大臣による日本側の発表の前にトランプのSNSで発表されたため内容が本当に信頼できるものなのかどうか?疑問が残る。しかしながら15%の相互関税で決着したことで、ひとまずマーケットも歓迎し、落ち着きつつあることはポジティブに見ていいだろう。また欧州時間の27日、トランプ大統領と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は貿易交渉で合意したと発表した。米国がEUにかける関税を15%に下げる代わりに、EUは米国からの7500億ドル(110兆円)相当のエネルギー購入や6000億ドル超の対米投資を約束した。日本との合意が難航していたEUとアメリカの交渉を前に進めた形である。
これによってトランプ政権は8月1日、相互関税を引き上げることになるが、米国の平均関税率は2%台から20%台に上昇し、世界でも異例の高関税国となる。学生時代に比較優位理論について学んだが、アメリカのような先進国が米国以外の先進国のみならず新興国や途上国に対しても高関税をかける例は、前代未聞である。トランプのコメントから彼が貿易や経済のことを全く理解していないことは明らかであるが、その素人に圧力をかけられているFRBパウエル議長も気の毒としかいいようがない。後世の歴史にトランプの悪政はどのように伝えられるのか?実に興味深いものである。
イギリスのEU離脱は、まさに事故であったが、2度にわたるトランプの大統領就任はそれ以上の大事故である。トランプ関税は、世界経済にとってマイナスであり、もはや人災である。この人災によって戦後80年続いてきた自由貿易体制は終焉した。中国は、2001年にWTOに加盟し、2000年代には世界の工場として、アメリカなど西側先進国に輸出することで経済成長を続けてきた。アメリカはじめ西側先進国も中国からの輸入品を消費し、グローバリゼーションによって世界はWIN-WINとなったように見えた。しかしながらトランプとトランプ支持者らによって世界は大きく変わってしまった。今後の先行きを見通すことは困難であるが、この大きな変化は、一過性のものではなく大きな流れとなりそうである。
日本における政治の混乱ぶりを見ても、政治が世界の変化に全くついていけないことは明らかである。ここでは政治的な見解は控えたいが、世界でも日本でも極端な思想を持つ政党や政治家がじわりじわりと増えていることは、大変気になるところである。気候温暖化と同じで少しの変化がいつの間にか時間の経過とともに、とんでもない変化を引き起こすといった事態だけは避けなければならない。イチロ―選手は、日々の努力によってヒットを1本ずつ積み重ねて、とんでもない記録を打ち立て殿堂入りした。政治家は国民が見ていないところで、日々少しずつ悪いことをして、世の中を疲弊させているように感じる。実に対照的である。
2025年は世界の歴史において大きな転換点となるだろう。戦後続いたグローバリゼーションに変わる新しいシステムや新しい秩序が必要である。国家の力が低下する中で、新しい秩序はどのように作られていくのか?今はまだその形は見えないが、新しい秩序を作っていくのは国家とは限らない。世界一の経済大国アメリカを含め先進各国の財政は深刻である。短期的な政策を重視し、長期的な視点を欠いた結果、財政悪化を招き、政治の機能不全が更に財政赤字を悪化させる悪いスパイラルに入っている。世界をより良くしていく主体として国家は頼りにならない。これから頼りになるのは、強い企業であり、強い個人なのかもしれない。
資産運用においても『混沌とする世界』という前提に立って、運用方針や戦略をしっかりと立てて進めていかなければならないが、大切なことは『ここに置いておけば安全』と言える資産がないということである。
人的資産を活用してお金を稼いで、賢い消費をすることで収入-支出がプラス(利益)となるはずである。仕事をしているのに毎月の収支がマイナスになっている人は、資産形成が難しいだけでなく、赤字企業と同様に損失の蓄積は、いずれ破綻を招いてしまう。日々の積み重ねが長期に影響を与えるのであるが、資産形成を出来ない多くの人がダメな政治家と同じで短期志向に陥り、長期的な利益を失っている。
世界的なインフレで実質賃金がマイナスとなる世の中では、何とか収支をプラスにして利益を積み重ねることが大切である。お金が貯まらない人ほど一発逆転を狙いがちで、ギャンブルに走ってしまう。不確実性の高い混沌とした時代においてこそ、一日一日を大切にし、小さな成功を積み重ねていくことが大事である。