
2025年6月も終わり、まもなく折り返しを迎える。この半年は、公私において様々な出来事があった。
正月3日に母が急逝し、その一か月後に義理の母が亡くなった。いつか起こる出来事であるのだが、あまりに急であったため、気持ちの整理がつかず追いつかなかった。もちろん仕事も大切であるが、家族以上に大切なものはない。家族の死を通して、あらためて人生において何が大切なのか?深く考える機会となった。人間はいつ死ぬか分からない。人生においてやりたいことを、後回しにすることなくベストを尽くしていきたい。家族や大切な友人、そしてお客さまに少しでも貢献していきたいという思いがあらためて強くなった半年であった。
さて4月のトランプ関税発表後の混乱は、今もなお継続している。ロシア・ウクライナ戦争、イランとイスラエル、ガザ地区における中東情勢も極めて不透明な状況である。戦後80年が経過し世界は戦争の反省どころかまた愚かな行動を繰り返しているように見える。今の世界情勢を見れば世界平和など幻想であり、平和へのハードルは、ますます高くなっているようである。
世界は、もはや米中貿易摩擦とか米中の覇権争いといったレベルの構図ではない。NATOを含めた同盟国に対してもトランプは暴走しており、誰かがこの暴走を止めなければならない。しかし、それとは逆に暴君トランプにすり寄る世界の政治家やビジネスマンらの言動を見ていると法律や規範、道徳などを含め世界秩序は、崩壊しつつある。誰の目にも明らかであるが、世界経済の先行きは、ますます不透明な状況である。
しかしながら、先行きが厳しいからといって投資をやめる必要はない。資産運用は、生きている限り継続することが出来るのだ。今年のマーケットは、かねてから割高感が指摘されており、厳しくなることはある程度予想されていた。そんな中で4月のトランプ関税のショックによって世界同時株安の展開となった。その後もトランプの暴走あるいは迷走が続いているが、マーケットは少しづつ落ち着きを取り戻しつつあり、株価はトランプ関税前の水準に回復している。マーケットの上げ下げに一喜一憂するデイトレーダーにとっては大変であったと思うが、しっかりと腰を据えた長期投資家にとっては、一時的な上げ下げは、ノイズのようなものである。
これから投資家にとって必要なことは、世界経済が不透明な状況において信用できる資産に投資し、継続していくことだと思う。
まだ半年残っているが2025年(昭和100年)は、1989年のベルリンの壁崩壊以来の大きな転換点となるだろう。トランプ関税をきっかけにアメリカ国家の衰退が始まった。自身の誕生日に軍事パレードを行い、イランへの軍事攻撃を展開。関税そのものの弊害も大きいがそれ以上にアメリカの国家としての信用低下がより深刻である。
しかしながらアメリカにとってかわる新たな覇権国が出てくることはないだろう。中国経済も以前の日本のデフレのように厳しい経済状況にあり、アメリカにとって代わり覇権を握ることは困難である。ベルリンの壁崩壊で米ソ冷戦が終結し、アメリカは覇権を握ったがいよいよ覇権国の座を捨てることになった。勝者なき世界、Gゼロの世界においては、他国に配慮をする余裕はなくなり、自国の利益のために行動する。極端な主張をする扇動家が現れ支持を集めリーダーとなる。気づけば世界にはトランプのような人物がますます増えている。各国の財政状況は厳しい。国家の衰退がますます加速している。
経済の3主体は、個人、企業、国家の3つであるが、国家が衰退する中で近年マグニフィセント・セブンのような巨大ハイテク企業が台頭し、影響力を増してきた。
またイーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏、マーク・ザッカーバーグ氏、ジェンスン・ファン氏ら巨大企業のオーナーらは、巨大資本を背景にトランプ政権にすり寄り、トランプの悪政を称賛もしくは容認している。一度は最もトランプに近づいたイーロン・マスク氏は、結果的に対立し距離を置き始めたが、今度はジェフ・ベゾス氏がチャンスとばかりにトランプに近づいている。ベネチアで70億円ともいわれる莫大な費用をかけた自身の結婚式にトランプらに招待状を送ったという。トランプはスケジュールの都合で参加しなかったものの娘のイバンカ氏ら著名人200名が参加したと報じられている。オーバーツーリズムが問題となっている伊ベネチアでは、ベゾス氏の豪華な結婚式に対して市民の抗議運動が起きているという。
ジェフ・ベゾス氏は、イーロン・マスク氏率いるスペースXに自身が経営するブルーオリジンが宇宙ビジネスで後れを取っているため、巻き返しを図っているという。年内にメラニア夫人を主人公としたドキュメンタリーをアマゾンが制作することも決まっているが、莫大な資金力を背景にトランプ一族を猛接待している姿は、ロシア大統領とオリガルヒの関係と何ら変わらない気がする。経営者として大成功したベゾス氏であるが、正直なところ尊敬する人物ではないような気がする。
ソフトバンク孫さんのトランプに対する最近の発言に関しても違和感をおぼえる。そこまで、あからさまにトランプを持ち上げないと成功できないのだろうか。孫さんのトランプ政権に対するすり寄りに関しては、甚だ疑問であり、個人的には大変残念である。もちろんビジネスにおいてトランプ政権を敵に回す必要はないとしても、露骨にトランプをおだて、すり寄る姿勢を見ていると世界の多くの人々は、孫さんに対し、違和感や危うさを感じているのではないだろうか。私には到底、巨大企業オーナーの気持ちは分からないが、自分の信念を曲げてまでビジネスを成功させたいとは思わない。
そんな中で先ごろ引退を表明した世界一の投資家ウォーレン・バフェット氏がトランプの関税政策を批判していることは、ある種の救いである。FRBのパウエル議長も自身の信念を貫いているが、そのような人物が増えなければ、トランプの暴走を止めることはますます困難となるだろう。社会的に影響力の大きい経営者らが政治家にすり寄ることで社会はおかしな方向に向かっていく可能性が高い。過去の戦争もそのような積み重ねで起きてきたのではないだろうか。
私利私欲ではなく自身の信念に基づいて行動するバフェット氏こそが真の成功者である。不透明な時代だからこそ自分の信念に従って、行動していきたいものである。