株式会社スノーボール

Gゼロ世界の混迷

ある出来事をきっかけに世界が変わってしまうことがある。

『トランプ関税』は、私たちの生きている世界を大きく変えたと感じる。トランプの連日のドタバタ劇に世界経済もマーケットも翻弄されている。大迷惑である。

一人のクレイジーな老人が世界経済をこれほどまでに悪化させた例は、世界の歴史上、大変珍しいのではないか。ドジャース大谷のニュースも毎日見てると少しうんざりするが、トランプのニュースは、世界経済やマーケット、人々の生活に実害を及ぼすため、かなり深刻な問題である。世界一の悪人トランプ、マフィアのボスがかわいく見えてしまうほどである。

アメリカ国内でも反トランプのデモが広がっている。さすがに支持率も低下しているのだが、トランプの岩盤支持層がいるため支持率は、未だに40%のラインを維持している。世界を困らせている老人の取り巻きもかなり危うい人々ばかりで、マーケットにおいても米国株安、米国債券安、ドル安のトリプル安が進行中である。いよいよアメリカの没落が始まったのだ。

日本は、戦後アメリカの同盟国として、アメリカの軍事力の傘に守られ、経済成長に専念することができた。分断された東西ドイツや朝鮮半島とは違って、恵まれたポジションにいることで奇跡的な戦後の高度成長を成し遂げた。1980年代後半には日米貿易摩擦が勃発するなど一時は世界第一位の経済大国アメリカを脅かす存在となったのだ。

しかしながら、日本の巨大なバブルは崩壊。『失われた30年』と言われる長い長い低迷に入ることに。一方のアメリカは、冷戦後に覇権国としての地位を確立し、グローバリゼーションの中心として世界の盟主として世界経済をリードした。その後2008年のリーマンショックによる金融市場の崩壊は瞬く間に世界経済を悪化させる。2011年には欧州債務危機が勃発。欧州のみならず国家の債務危機は、じわりじわりと世界経済の成長を鈍化させることになった。その後もブレグジット、米中貿易摩擦、コロナやロシア・ウクライナ戦争等の影響もあり、国家の債務は増え続ける。財政が厳しい国家に代わってマグニフィセント7など巨大ハイテク企業が世界経済のけん引役となったのだ。マグニフィセント7の一角であるテスラのイーロン・マスクは、トランプ大統領誕生に貢献し、政府の一員として政治に影響力を行使するようになった。トランプは、やりたい放題。誰の目にも明らかであるが、自らの愚策による世界経済の悪化をFRBパウエル議長に責任を押しつけ、罵倒し、解任すると脅す。そして翌日には解任はしないから利下げしろという。まるでプロレスの興行をみているような光景が日々繰り広げられている。

ホワイトハウスもトランプ好みの金色の装飾品が集められ、金ピカに改装中らしい。トリプル安の中、金価格だけが上がっているのは何とも皮肉である。

それにしてもトランプ一期目は、酷い4年間であった。バイデンの4年間は、今思えばまだ良かった。これから4年間でアメリカの国家としての地位は大きく下がることは確実である。アメリカは完全に分断状態にあり、南北戦争以来の危険な状態である。

最近、学会に参加予定のフランス人研究者がトランプ批判を理由にアメリカの空港で入国拒否されたという。イェール大学の著名教授3人は、家族と一緒にアメリカを去り、カナダのトロント大学に移籍するという。才能あふれる移民によって繁栄したアメリカ。その頭脳がアメリカから離れていく。またハーバード大学の助成金凍結も大問題であるが、自由の国アメリカから言論の自由が消える事態に陥っている。

長年にわたって世界のリーダーとして君臨してきたアメリカのブランドは、一人の愚かな老人のせいで大きく失われてしまった。現時点でトランプ後の世界を想像することは難しいが、もはや以前のような、おおらかなアメリカに戻ることはないだろう。多くの良識あるアメリカ人の事は大好きであるが、国家としてのアメリカは微妙である。日本もアメリカに依存しすぎたツケを今後払うことになるかもしれない。アメリカの都合の良いように利用されることだけは避けてほしいが、今の日本政府を見ていると大変不安である。貿易においても外交においてもビジネスにおいても一極集中は良くない。投資においても集中投資は危険であり、分散が大切である。

ユーラシアグループのイアン・ブレマー氏が2025年の10大リスクの1位にあげたGゼロ世界の混迷がいよいよ深まってきた。

世界経済とマーケットにおいても、世界のすべての人にとっても大変な時代であるが、今こそ『半脆弱性』を発揮し、冷静に乗り越えていきたいものである。

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