株式会社スノーボール

セブン・タイタンズ

今回のコラムでは、直近話題を集めている中国企業やマーケットについてお伝えいたします。前回のコラムで中国の新興企業DeepSeekについての記事を書きましたが、中国には他にも勢い良く伸びている企業が多数存在します。まずは、企業をご紹介する前に現在の中国経済について触れます。

いま、不動産バブルの後始末や地方政府の債務問題に足をとられ、中国経済に高揚感は乏しい状況です。加えて、消費者心理が低迷しており、若年層を中心に失業率が悪化、住宅不況による販売不振、さらに人口減や少子高齢化が加速しているなど問題が山積しています。

3月5日に中国で国会に相当する全人代(全国人民代表大会)が開幕し、李強(リー・チャン)首相は2025年の実質経済成長率の目標を前年と同じ5%前後と定めました。しかし、目標達成は容易ではなく多大な努力を払う必要があり、景気失速への危機感が浮かんできます。

このような環境下ではありますが、直近中国株の評価は一変しました。

フランスの金融大手ソシエテ・ジェネラルが「セブン・タイタンズ(巨人7銘柄)」と名付けた中国の主力ハイテク株の2025年の時価総額増減率は、米主力ハイテク株のマグニフィセント・セブン(壮大な7銘柄)を大きく上回っています。セブン・タイタンズは「テンセント、アリババ集団、シャオミ、SMIC、BYD、JDドットコム、ネットイース」の7社で、この7社の株式時価総額は3月14日時点で計211兆円と2024年末比約25%増加しています。

中国はDeepSeekの成功をきっかけにイノベーションの実現に自信を深めており、株式市場も評価を見直す動きが広がっています。しかし、今まで中国の株式相場は投資家を何度も失望させてきました。この流れが続くかどうかは中国経済の回復にかかってくるかと思います。

ただ、凄まじい勢いで伸びている企業も直近では多く見受けられます。経済全体が悪くても景気に左右されにくい強い企業は一体どこなのか?という観点で、いくつか面白い企業をご紹介いたします。

まず、BYDについてです。BYDは自動車産業におけるリーディングカンパニーとして、その事業は多岐にわたります。自動車事業を中心に、電池、ITエレクトロ二クス、新エネルギー事業などを手掛けています。特に、近年はEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の分野で成長が急速に伸びており、世界的な自動車メーカーとしての地位を確立しつつあります。

また、最近ではドローンを搭載した自動車を発売すると発表しました。中国のドローン大手のDJIと協力し、車両のルーフからドローンを飛行させて写真撮影などができるようにするといった革新的な製品開発にも取り組んでいます。BYDの時価総額は20兆円を超えており、今後の成長に注目です。(参考までに、トヨタの時価総額は本日3月18日時点で44兆円です。)

次に、シャオミ(Xiaomi)についてです。シャオミは中国の総合家電メーカーで、スマートフォンやウェアラブル端末、テレビ、ロボット掃除機などを製造しています。高品質な製品を低価格で販売するコストパフォーマンスの高さが魅力で、中国の家電版の無印良品とも呼ばれるようなおしゃれなデザインで若年層に支持されています。中国国内ではiPhoneを抜いてシェアがナンバー1となる時期もありました。

2024年の3月に電気自動車(EV)市場に参入し、初のEVモデルはセダンタイプの「SU7」で価格は約450万円から、発売開始からわずか27分で5万台の予約が入ったことで大きな話題を集めました。シャオミのEVの基本性能はベンチマークとするテスラの高級車種「モデルS」を上回り、性能は高級車並みながら価格は安いという理由で大ヒットしたのです。

ファーウェイもそうですが、中国でこうした異業種の新規参入が活発化した背景には、政府がEV普及を後押ししたことにあります。今まで中国で高級車といえば、ドイツの高級車ブランドである「メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ」のドイツ御三家でしたが足元では失速し、新エネ車への転換を機に中国の新興勢に侵食されています。これは時代の大きな転換点だと思います。

次に、ユニツリー(Unitree)についてです。中国のロボットベンチャー企業で、電動4足歩行ロボットやスマートフィットネス機器などを開発・販売しています。中国の1月の春節番組でヒト型ロボット「G1」がダンスを披露して話題になりましたが、AIによって加速されるロボティクス技術はとてつもない速さで進化しています。価格は200万円からと急速に低下しつつあり、知能を持つヒト型ロボットが家庭や工場で働く未来社会の到来が一気に近づきました。

他にも、3月3日に香港取引所に新規上場した中国飲料チェーン最大手の蜜雪氷城(ミーシュエ・グループ)にも注目しています。店舗数は米スターバックスを上回り、世界最多となりました。上場を機に東南アジア市場への進出を加速するといいます。もともとは1997年に河南省で小さなかき氷店としてスタートした同社ですが、圧倒的な低価格でコストパフォーマンスを重視する学生などから支持を受けています。

以上、いくつか中国企業を挙げましたが、特に中国の自動車市場は圧倒的な経営スピードと熾烈な競争が中国の自動車産業の進化を促し、競争力を鍛えてきたように思えます。

米中対立により苦境に立たされる中国から、世界を脅かす脅威の革新力を持った企業が次々と出てきていることは、非常に興味深いですし、今後も目が離せません。

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