株式会社スノーボール

マーケット下落に対する心構え

2025年1月21日のトランプ大統領就任から約3カ月。

世界経済とマーケットは、トランプの暴走に翻弄されている。二転三転し、一貫性のないアメリカのお爺さんの言動や政策に世界中が大混乱に陥っている。ゼレンスキー大統領のことを独裁者と呼び、プーチン大統領とは関係が良いという。民主党からロシアのスパイとの声まで聞こえてくるほどであるが、ロシアとウクライナ戦争への対応は、今のアメリカを象徴している。個人的には今のアメリカは、分断状態にあり、南北戦争以来の危険な状態と感じる。

昨日(3月17日付)の日経新聞朝刊にシカゴ大教授(元インド中銀総裁)ラグラム・ラジャン氏のオピニオンが掲載された。

『トランプ政権の政策を総じてどう見ているか?』との質問に対して以下のようにコメントしている。

『新しい手法を試そうとの姿勢だろうが、保護主義などはごく古い策で、皆にとって害になることをあらゆる研究が示している。今日の製造業の雇用喪失はオートメーション(機械化)が主因だ。関税で製造業を守っても、機械が米国内で仕事をするだけだ』

トランプのことを面白いという人もいるが、彼の思想は凝り固まっており、かなり頭も悪そうである。コメディアンとしては良いかもしれないが、彼が大統領になったことは、アメリカにとっても世界にとっても大きなマイナスである。トランプを誕生させた共和党、民主党のふがいなさも問題である。アメリカ政治は明らかに深刻な状況であるが、トランプ政権誕生は、歴史における突発事故のようなものだろう。私のアメリカの友人もトランプ誕生に心からがっかりしている人は多いのである。アメリカには多くの友人がいるし、今も大好きな国であるが、国家としての威信低下は避けられそうもない。

ラグラム・ラジャン氏のような高名な学者だけではなく、ある程度の知識がある人から見れば明らかであるがトランプのとる保護主義は、アメリカ経済にとっても世界経済にとってもマイナスであり、ウィンウィンの真逆である。本人はディールによってゼロサムゲームを行ってアメリカに利益をもたらすつもりのようであるが、ボディブローのようにアメリカにも害を及ぼすだろう。しかしトランプ周辺にはイエスマンしかおらず、引き続き、この政権は暴走を続けることになりそうである。

そんな状況下において一部の投資家は、当然であるがトランプ政策への懸念から、利益確定売りに動き、株価の下押し要因となっている。よって2023年、2024年と好調であった株式市場は、今年の年初から一転して調整局面に入っている。

トランプの暴走は、世界経済にとって想像以上に脅威である。よって今回のマーケットの下落もある意味しかたのないことである。投資家にとってマーケットの下落は、一時的であったとしても耐え難いものであるが、2年連続で大きく上昇したマーケットには、やや割高感があった。特にこの数年の相場をけん引してきたマグニフィセントセブンやAIや半導体関連のハイテク銘柄は、大きく崩れた。テスラに関しては、トランプ大統領当選後に株価が大きく上昇したが、イーロン・マスクのこれまた暴走でテスラ不買運動が起こるなど昨今の業績不振もあり、トランプ就任前の水準まで株価は大きく下落した。株価は、ファンダメンタルズ(業績)のみならず将来の期待で動くが、テスラの場合は業績と期待の両面で剥がれ落ちた形である。テスラを買うトランプのパフォーマンスが全く効果がないのは当然である。ビットコインも同様でトランプ誕生で乱高下しているが、非常にリスクが大きくどこかではじけそうな雰囲気である。

さて当社のお客様においてはグローバルに長期分散投資している。まさに投資の王道であるが、そんなお客様においても、年初からのマーケットの下落によって含み益が減少しており、気分は良くないかもしれない。また最近、投資を始めたお客様は、マイナスリターン(含み損)となっており、投資家心理としては不安や多少なりともストレスに感じるはずである。私自身も若い時は、資産価格の変動に動揺することもあったが、投資経験が長くなるにつれ、マーケットの変動に慣れ、気にならなくなるものだ。むしろマーケットの下落局面は、前向きに受けとめると同時にチャンス到来と感じることもしばしばである。マーケットは下がれば、上昇するし、上昇すれば下がるものである。そのように考えれば、今のマーケットの下落を過度に心配する必要はないと思うのだ。

長年にわたってマーケットとお客様と向き合ってきたファイナンシャルアドバイザーとしては、お客様のお気持ちは良く理解できる。ベテラン投資家と経験の浅い投資家では下落局面における気持ちは多少異なると思う。しかしながら全ての投資家はその時の感情に任せて売り買いすることは避けなければならない。投資で一番大切なのは、感情を一定に保ち、当初の計画に従って淡々と投資を継続していくことである。

マーケットは、上昇と下落を繰り返しながらも、長期では上昇していくものである。長期とは、10年以上と考えるべきである。投資経験が浅くマーケットの変動になれない人は、マーケットの下落局面では、証券口座を見ない方が良いかもしれない。当社のお客様の多くは、忙しい方が多いため証券口座の残高をあまり見ていない。暇な人ほど数字が気になるかもしれない。証券口座の数字を見ても見なくても結果は変わらないのだから、その日々の数字に一喜一憂しても意味がない。お金は手段であり、目的ではない。自分の資産残高を見て幸せに感じる人もいるかもしれないが、それは本当の幸せなのだろうか?現役で働いているときは、余ったお金を運用してお金にも働いてもらう。仕事をやめたら、これまでに貯めたお金を運用しながら、人生の目的のために使っていくことが望ましい。長期投資を成功させるためには、日々のマーケットの変動を無視して、自分自身の人生において、優先順位が高いこと(仕事や遊びなど)、今やるべきことに集中したほうが良いだろう。

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