今までのコラムの中で、為替や投資信託などをテーマに書かせていただきましたが、今回は債券について書いてみたいと思います。
まず初めに、債券とは一体何か?
債券は、国や企業などの発行体が、投資家からお金を借り入れるために発行する有価証券です。債券を購入するということは、国や企業などにお金を貸すということなのです。その見返りとして、債券を購入した人は一定期間ごとに利子を受け取ることができます。
債券投資は、一定の利率で定期的に利子を受け取ることができるので、収益性が安定していることが魅力です。また、満期時には投資した元本が戻ってくるため、キャッシュフローが見通しやすいという特徴があります。
債券は、他の投資商品に比べて安全性が高いといわれていますが、安全性は発行体の信用力によって変わってきます。一般的には、信用力の高い国や企業が発行する債券は、元本と利息の支払いが滞るデフォルトリスク(発行体の経営状態の悪化、債務不履行で債券投資の元本・利息の不払いが起こる可能性のこと)が低いため、安全性が高いといわれています。債券投資を行う際は、発行体の信用力を慎重に見極める必要があるのです。
また、債券は有価証券として流通市場で取引されるため、多くの銘柄で流動性(現金化のしやすさ、取引のしやすさ)が高いといわれています。一般的には、国債や大企業の発行する債券は流動性が高い傾向にありますが、地方自治体や中小企業の発行する債券は流動性が低い場合があります。
債券は比較的安全性が高く安定した収益が見込める一方で、信用リスク、価格変動リスク、為替変動リスク、途中償還リスクの4つのリスクがあります。
信用リスクは、債券の発行体の財務状況の悪化や経営不振などにより利払いや元本の償還が滞るリスクで、価格変動リスクは、売却時の価格が購入時の価格より上がっているか下がっているかが分からないというリスクです。
為替変動リスクは、売却時の為替レートが購入時より円安になっているか、円高になっているかが分からないというリスクで、途中償還リスクは、債券が満期前に発行者の都合で償還されるリスクのことです。発行者が途中償還を選択した場合は、投資した人は満期までの利子収入を得ることができなくなります。
ところで、債券と預金の違いは何でしょうか?
債券には満期(返済期限)があり、値動きがあります。
例えば、皆様がどこかでお金を借りるとなったとき、利息(クーポン)を支払うと思います。銀行預金に預けていると少しばかり利息がつきますが、これも銀行が私たちからお金を借りているということなのです。債券には価格変動リスクがあるため、預金よりも大きな利回りを獲得できるということです。
では、債券と株式の違いは?
債券投資をすると企業に資金を貸すことになり、株式投資をすると企業の所有者となるところが違う点です。
投資収益の違いは、債券投資は利息の支払い時期と金額は確定しており、発行体が債務不履行に陥らない限りは確実に受け取れますが、株式投資は企業の判断で業績に応じた配当金を受け取ることができます。
元本保証の違いは、債券投資は発行体が債務不履行に陥らない限り、満期日に投資元本の全額が返済されますが、株式投資は返済される元本の金額は、株式の売却時の株価によって決まります。
よって、リスク特性では、債券投資が比較的低く、株式投資が比較的高いということになります。
一般的には、経済状況が良い時には株が上がると金利が上がり、債券価格は下がるといったように、株と債券は逆相関になる傾向にあります。ただ、2022年のように株と債券が両方とも下がった年もあるため、例外もあります。
株式だけのポートフォリオではなく、債券を組み入れることにより、相場がいい時だけではなく、悪い時にも耐えうる、より強固なポートフォリオを目指すことが大切です。
ただ、債券は比較的リスクが低く安心だからという理由で全体バランスからみた債券の比率を守らず多く買ってしまった場合、以下のようなことが個人にも起こりうると思います。
以下、農林中央金庫の一例をあげます。
国内では長く低金利環境が続いていたこともあり、農林中金は運用資産の8割近くをドルなど外貨建て資産で運用していました。外債が中心の運用でしたので、金利が大きく上昇したことにより海外債券の値下がりを大きく受け、投資の失敗をしてしまったのです。
今月19日に農林中金が発表した2024年4-9月期連結決算は、最終損益が8939億円の赤字となり、25年3月期通期の最終赤字額は6月に目安として示した1.5兆円からさらに膨らむ見通しです。足元では米10年債利回りは4.2%前後まで高まっており、外債の売却を急げば損失が膨らむ恐れがあります。
このように、債券に偏った運用をすることも非常に危険なのです。
最後に、全世界が注目していたアメリカの大統領選挙は終わりましたが、インフレ、成長、金利に政策が与える影響については依然として不確実性が残っています。さらに、中東やロシアウクライナ紛争、その他地域の地政学的リスクの高まりにより、今後市場が混乱する可能性もあります。
「現時点で株式の方が上がっているから追加投資の資金も株式の方に多くまわしたい」「債券はあまりパフォーマンスが良くないから魅力に感じない」というお声もよくいただきますが、この不確実な環境下ではやはりお客様一人一人にあった適切なリスクをとって運用いただくこと、つまりは資産配分が一番重要だと感じています。
パフォーマンスの良い悪いだけで選ぶのは非常に危険であり、運用資産それぞれ役割が違うことを忘れてはいけません。
投資において一番大切なこと、それは資産配分です。