株式会社スノーボール

ある女性投資家Aさんの話

当社は、お客様の資産運用を成功に導き、より豊かな人生を送っていただくことを目標としている。2024年6月末時点で顧客数325名、お預かりしている資産残高は、187億円を超えた。1億円超の資金を当社に預けていただいているお客様も45名となった。時間と複利の効果を最大限に活用してお客様の資産残高を雪玉式に増やしていくことが当社のミッションであるが、そのためにはお客さまとの信頼関係が欠かせない。当社には素晴らしいお客様がたくさんいるのだが、その中である女性投資家Aさんのこれまでの歩みについて紹介したい。個人情報保護の観点から、個人が特定できないように属性などは出来るだけ省略して書いてみたい。

私がAさんにお会いしたのは2007年の年末であった。きっかけは私が仲良くしている人からの紹介であった。当時、ファイナンシャルアドバイザー(IFA)としての活動を開始したばかりで担当する顧客数は20名程度だったと思う。東戸塚駅近くに開設したばかりの私の個人事務所にてAさんと面談した。Aさんは、これまで投資経験はなく金融資産は、ほぼ社会人になって貯めてきた預金のみであった。Aさんは当時30代半ばで私と同世代。会社で働きながら、休日には海外旅行などにもお金を使っており、支出にメリハリをつけながら、しっかりお金を貯めることが出来る方であった。このしっかりとお金を貯められる能力が高いことは長期投資には有効であった。当時2000万円程度の預金を持っていたがAさんのその後のライフプランから1000万円を初期投資額として運用することを提案し、毎年200万円の追加投資を実行する運用戦略を提案した。目標利回りは5%~7%を想定。2008年1月に株式型投信600万円、債券型投信300万円、オルタナティブ100万円、6:3:1の比率で運用をスタートした。日本株式、海外株式、海外債券、オルタナティブの各資産クラスにインデックスファンドをコアとしてオルタナティブ資産にはアクティブファンドを採用するポートフォリオであった。その後、資産配分は少しずつ変化するがこの17年間、株式中心のポートフォリオを維持してBUY&HOLDで投資を継続した。

さてご存じのとおり、2008年は、とんでもない年であった。9月15日にリーマンブラザーズが破綻。瞬く間に金融危機は世界中に広がり、実体経済を悪化させていった。Aさんが投資を開始して1年後の2009年1月には、Aさんの投資した1000万円は600万円を割り込んでいたと思うが、Aさんは、その厳しい局面においても私と打ち合わせした当初のプラン通り、正月明けに200万円の追加投資を実行した。実はリーマンショック後から約半年後の2009年3月10日は、マーケットの大底となったが1月に追加投資した200万円もどんどん値下がりする異常事態であった。当時、全てのお客様から連絡があり、『この危機においてどのように対応すればよいのか?』と質問されたが、『時間はかかるかもしれないが必ずどこかで反転するので売却するのではなく忍耐強くむしろ余力があれば追加投資を実行してほしい。』と訴えた。しかし、私の言葉が当時、皆さんに届いていたとは思えなかった。ほとんどのお客様が狼狽する姿を見て、私自身も心を痛めた。正直に告白すると当時、私は帯状疱疹になってしまった。それほど厳しい100年に一度の金融危機であった。

お客様も私に対して露骨にクレームを言ってきたわけではないのだが、『投資するべきではなかった』とか『自分は運が悪い』とか、誰かに何か一言いわなければ気が済まないそんな状況で少なからず私に対して嫌味を言ってきた人もいた。もちろん大切なお金が減ることのストレスを吐き出すことは、ある意味で仕方ないし、我々も正面から受け止めなければならない。私自身、自分のお金が減ることはさほどストレスにならないが、お客様のお金が減ることには今でも心が痛いものである。お客様のお金は、自分のお金よりも大切だと考えている。

ファイナンシャルアドバイザーの仕事で一番大変なのは間違いなくリーマンショックのようなマーケットの暴落時にあるのだが、あの過酷な危機の際にAさんだけは、私に対して一言も不満や文句を言うことなく、ただ一緒に立案した運用戦略に従って毎年正月明けに200万円の追加投資を継続した。そのメンタルは、メジャーリーガー並みである。株価の変動などに一喜一憂せず感情を一定に保つことにおいて、Aさんほどの人物はなかなかいないと思う。メジャーリーグであればオールスターに出るくらいの投資家である。

2008年1月に初期投資1000万円、2009年1月から2024年1月の計16回、毎年200万円を継続投資した。いや一度だけ100万円の時があった。

Aさんの総投資額は、1000万円+3000万円(200万円×15年)+100万円=4100万円である。Aさんの約17年間の投資期間は、私のファイナンシャルアドバイザーのキャリアそのものであるが、最近Aさんの投資残高は、1億円を超えた。Aさんは、年に一度の追加投資をする時にしか残高を確認しないため、大台を超えたことを伝えると驚いていた。2008年に運用スタートした際に60歳までに運用資金1億円を目指しましょうと話していたが、計画より6年早く達成することができたことは非常にうれしいことである。Aさんは預金等の他資産と合わせると経済的にはリタイアすることも可能であるが、今後もしばらく仕事を続けて、働いている間は毎年200万円を追加投資していく予定である。Aさんは、今も定期的に海外を旅するなど人生を楽しんでいるが、リタイア後も投資を継続するため経済的に困ることなく豊かな人生を送るだろう。

久しぶりにAさんとお会いした際に『もし中浜さんと会ってなかったら、投資をしていなかったと思います。』と言われたが私もAさんにお会いできたことを心から感謝している。Aさんを17年間サポートした経験から、お客様とアドバイザーの深い信頼関係が資産運用を成功に導くことをあらためて確信した。大切なお客様のためにまだまだ頑張らないといけないと思った次第である。

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