株式会社スノーボール

ベトナムの旅

先週6月15日から一週間、休暇でベトナムを訪問した。前回のコラム、インドに続いて今回は、東南アジアの大国、人口約9946万人のベトナム社会主義共和国について書いてみたい。現在のベトナムの平均年齢は約33歳ということで日本よりも15歳程度若く、若いベトナムでは私はもはや、おじいさんに近いのかもしれない。

首都ハノイに2泊、ホーチミンに2泊、機内2泊と短い旅であったが、ハノイでは日本留学経験のあるベトナム人経営者のお二人、ホーチミンでは現地駐在日本人の方と交流出来たため、とても中身の濃い滞在となった。まず空港で3万円を通貨ベトナムドン(VND)に交換。最近のレートで約470万ドンである。ドンは単位が大きくて正直計算が面倒なのだが滞在中に徐々に慣れるものだ。近年はドンに対しても円は安くなっているのだが、ドンも相対的に弱いため、滞在中ベトナムの物価は、とても割安に感じた。

ハノイ空港からホテルには、あらかじめ登録していたGrab(東南アジアのウーバー)のアプリを使って移動。ベトナム滞在中は全てGrabを使ってカード決済したため、ドンを使う機会は屋台や観光地のチケット代など頻度は少なかった。ハノイもホーチミンもGrabを使えば、ストレスなく移動できるし、料金も非常にリーズナブルである。例えば市内から空港まで30分超乗っても、1000円未満。市内の移動は、数百円程度で移動できるため、滞在中はGrabを駆使することにした。

さてハノイとホーチミンの雰囲気であるが、殆ど別の国のように感じた。縦に長いベトナムの北にあるハノイは、ベトナムの首都であり、地理的に中国に近く、四季があるため、冬にはダウンが必要なほどであるが、滞在中は37度近い猛暑であった。人口は844万人超と横浜市の2倍超の大都市なのだが1000年以上の歴史のある街はノスタルジックな雰囲気で非常に落ち着きのある美しい街であった。たまたま私が滞在中になんとロシア大統領がハノイを電撃訪問したが、ロシアとのつながりも深く政治の中心であることをあらためて実感した。ハノイ出身の女性経営者によるとハノイとホーチミンは、過去の戦争の歴史や互いの文化の違いはあるものの、現在の関係は概ね良好とのこと。

日本企業は、パナソニック、ホンダ、トヨタ、キャノンなど多くの大企業が進出しており、ハノイの街にも多くの日本製の車やバイクが走っている。またレストランからホテルまでGrabを使ってベトナムの最大財閥ビングループが立ち上げたEVメーカーVinFast(ビンファスト)に偶然乗ったのだが非常に快適で驚いた。VinFastは、2023年8月に米ナスダックに上場し、上場時の時価総額は一時1900億ドルに達し、テスラ、トヨタに続いて世界第3位となったほど今世界が注目するベトナム企業なのだ。今後、成長するベトナムの象徴的な企業となれるのか、注目したい。ハノイの印象であるが、とにかく食事がおいしかった。もちろん良いところに連れて行ってくれていることもあるが、ホテルの食事や屋台もレベルが高い。東南アジア諸国の食事は美味しいが日本人には少しこってり感が強い。しかしベトナム料理は全体的に味付けも日本に近くヘルシーであった。またベトナムの男性経営者に紹介していただいたが、最近ベトナムで流行っている日本人夫婦が経営するイタリアンレストラン『4PS』は、とても良かった。このレストランは日本にはないと思うが、ベトナムに20店舗以上展開する人気レストランで、店員もきびきびしていて特にピザとクラフトビールが美味しかった。今後もべトナムでどんどん成長しそうなレストランである。最後の夜、ハノイ名物、水上人形劇を堪能して翌日ホーチミンに向かった。

さて南部ホーチミンは、ベトナム最大の経済都市である。初めて訪問する人は、ホーチミンの活気、溢れるエネルギーに驚くと思う。ハノイを静とすればホーチミンは動である。北京と上海のような感じだろうか。街の至る所にビルや看板にサイゴン(通称)の文字が見え、アメリカ軍が駐留した歴史を思い出させる感じ。人口は900万超とハノイより人もバイクも車も一段と多く本当に賑やかな印象。昨年訪れたムンバイより人が少ないかもしれないが、東京よりも過密な印象を受けた。特に街中にバイク、車があふれており、もはや写真のような風景はホーチミン名物と言っていいほど。ただ街の景色を見ているだけで面白い。ドイモイ以降、とりわけ近年の高成長によって車やバイクなどが昔よりも奇麗になっているのだろう。さらにバイクに乗っている人が豊かになり、車に乗るようになる時には、バンコクやジャカルタのように渋滞が深刻になるかもしれないが、今後の街の発展が楽しみである。ホーチミンの気候は、北部ハノイと違って常夏である。かつて私が生活したマレーシアやシンガポールの気候と近い印象を受けた。町の中心部は、高層ビルが立ち並び、世界の大都市と比較しても見劣りしない感じである。またハノイもそうであるが、国際都市ホーチミンもとても華やかな印象を受けた。私は市内の中心に滞在したが、日本食や韓国料理、フレンチ、イタリアンなどのレストランがひしめき合っている。またホテルの近くを歩いているとシャトレーゼがあったので、コーヒーとケーキで休憩。近くにはハーゲンダッツや日系のコンビニ、ファミマやミニストップ、セブンイレブンが並んでいる。ホーチミンの中心部には生活に必要なものはなんでもあり、物価も安く治安も比較的良いため、日本人駐在員にとっては生活しやすい街のようだ。東南アジアにおける在留邦人数ではシンガポール、タイ、マレーシアに次いで第4位とのことであるがベトナム経済の成長期待もあって主要国においては在留邦人数が一番増えているようだ。ホーチミンでは、有名なベトナム料理やフレンチ、韓国焼肉を満喫した。またベトナムと言えばコーヒーであるが、滞在中にベトナムコーヒーをたくさん飲んだ。

コンデンスミルクが少し甘く感じるものの暑い街では、ちょうどよい。滞在中4回マッサージに行ったが、120分で4000円弱とリーズナブルで疲労回復にはもってこいであった。最終日に日本人に紹介していただいたフレンチで食事したが、レストランのアドバイザー(フランス人)と話すことが出来た。彼はアジア各国の契約フレンチレストランをまわって料理のアドバイスをしているようだが、その中でもホーチミンは、大好きな街だそうだ。『シンガポールは、退屈だがホーチミンは、歌舞伎町のように熱気があり、面白くてサイコー。』と笑っていた。

短い滞在であったが、ベトナムは奥が深く大変魅力のある国だと思う。植民地時代、ベトナム戦争を含め、歴史に翻弄された国でもあるが、そういう時代を乗り越えて今まさに経済発展が進行している。お会いした人たちからの印象では、ベトナムの人々は非常に勤勉であり、日本人と同様におもてなしの心を持っていると感じた。人々は親切で優しく笑顔が絶えず、こちらもなんだか幸せな気持ちになった。

最後にベトナムでは、カップラーメンが年間70億食、消費されるのだそうだ。人口1億人で70億とんでもない数字であるが、そういえばハノイからホーチミン行きの機内でも多くの人がカップラーメンを注文して食べていた。ベトナムは、カップラーメン大国なのであるが、70億食の約半分がエースコック製だそうだ。日本では日清が強いと思うが、ベトナムにおけるエースコックは、インドにおけるマルチスズキのような感じだろうか。

ホーチミンの初日夜に有名ベトナム料理店で日本人駐在員の方と食事していた時にエースコックの社長が同じレストランにいて我々のテーブルに立ち止まって簡単に挨拶させていただいた際に駐在員の方にそのことを教えていただいた。エースコックのベトナムにおける大成功はとても興味深い。最終日にホーチミンの現地スーパーでエースコック製のインスタントのフォーをたくさん買ってきた。今後も成長するベトナム経済に注目したい。

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