株式会社スノーボール

為替について考える

本日は為替をテーマに書いてみたいと思います。

私たち個人にとって為替の影響を身近に感じることができ、いちばん気になるのは海外旅行に行くタイミングではないでしょうか?かくいう私も、2019年2月に大学の卒業旅行で友人とハワイに行った際に、円からドルに両替し、そこで初めて為替を意識しました。アルバイトで一生懸命働いて貯めたお金が一瞬で減ってしまったショックは今でも鮮明に覚えています。当時の為替レートは1ドル110円でしたので、現在の1ドル155円前後と比較すると40円以上の円高でした。

たとえば、5000ドルの予算でハワイに旅行すると、

1ドル=110円のとき 110円×5000ドル=55万円

1ドル=155円のとき 155円×5000ドル=77万5000円

となります。

5年前の1ドル=110円だったときと比較すると22万5000円も多く費用がかかるため、海外旅行が好きな方にとっては今の状況はかなり旅行しづらいかと思いますが、円に対して強い通貨を持つ日本への旅行者にとっては、今の状況は天国ではないでしょうか。私たち日本人にとっては円高のほうが海外旅行に安く行くことができ、輸入品の価格が安くなります。一般的には円安よりも円高のほうが国内の物価全体が下がるため、消費者にとっては有利なのです。

では、企業にとってはどうでしょうか?

まず、円高になると輸入型企業は、輸入品を安く仕入れることができます。すると、価格競争力が向上し、売上拡大が期待できるため、円高は業績アップへの追い風となるのです。海外で商品を製造しているユニクロのファーストリテイリングなどの企業は円高の恩恵を受けやすいです。一方で、円安になると仕入れ価格が高くなるため、価格競争力が低下し、売上が縮小、業績ダウンとなり、輸入型企業にとっては逆風となります。

次に、輸出型企業の場合を考えてみましょう。

米国に自動車を輸出している企業で例えます。国内の自動車会社が米国に定期的に500台輸出し、その代金として500万ドルを受け取っているとします。このとき為替レートが1ドル150円の場合、500万ドルを円に換えたときの金額は以下になります。

1ドル=150円のとき 150円×500万ドル=7.5億円

1ドル=100円のとき 100円×500万ドル=5億円

となります。

1ドル=100円の円高になった場合、1ドル=150円のときより2.5億円も少なくなります。円高になると国内の自動車会社は円の受取代金が減って損をするのです。一方で、円安になって1ドル=150円になると、1ドルあたり150円×500万ドル=7.5億円となり、1ドル=100円のときより2.5億円多くなります。円安になると、国内の自動車会社は受取代金が増えて得をします。

現在は1ドル155円前後の円安傾向にありますが、円安による影響は他にも様々なところに出てきています。

例えば、米国でしゃぶしゃぶ店を展開しているすかいらーくHDは、食材を現地調達して費用を抑えています。日本経済新聞の集計によると、国内大手の海外店舗比率は2023年度に初めて4割を超えました。歴史的な円安下で内需型産業の代表である外食が製造業と同様に為替リスクを相殺して成長を目指す動きが広がったのです。国内外食の売上高の上位10社(日本マクドナルド除く)の海外店舗数は約1万3000店舗に達し、店舗数全体の42%を占めました。外食にとって円安は輸入食材の調達コストを押し上げ、価格転嫁できなければ原価上昇で収益が圧迫されます。長らくデフレが続いていた日本に比べて海外は値上げをしやすいので、外食企業が海外に出店の軸足を移しているわけです。

さて、需要と供給のバランスが為替レートを決めることをご存知でしょうか?

外国為替市場(インターバンク市場)では、「1ドル=100円で500万ドル売りたい」「1ドル=100円で300万ドル売りたい」など様々なニーズをもった世界中の金融機関が通貨を売買しています。この外国為替市場の市場価格にあたるものが、インターバンク・レートです。このインターバンク・レートは通貨の需給関係をもとに変動しています。

例えば、ドルを買いたい人がドルを売りたい人を上回ると、ドルの需要が増え「円安・ドル高」になります。逆に、ドルを売りたい人がドルを買いたい人を上回ると、ドルの需要が減り「円高・ドル安」になります。為替レートを動かすのは通貨の需給バランスなのです。

需要と供給が生まれる3つの要因は以下になります。

1,経常取引(貿易取引など) 2,資本取引 3,スペキュレーション(投機取引) この3つです。

景気の良い国には、世界中の企業や投資家が投資するので、その国の通貨が買われます。現在の世界における米ドル一強は、米国経済の強さを反映しているのです。

しかし米国経済が減速し、米国の金利が低下し、日本の金利が上昇すると、日米金利差が縮小し円高要因となります。ただ、日本では少子高齢化による労働人口の減少や国の借金の増加など、円安要因も複数あります。為替は複合的な要因によって日々動きますので正確に予測することは不可能です。

ですから、個人投資家としては、円高になろうが円安になろうが、どちらに動いても安全なように資産を守っていく必要があると考えています。円だけではなく、外貨建ての資産を持つことは資産運用におけるリスク分散として大変重要な要素だと感じております。

最後に、旅行好きな私は当面、円に対して比較的割安な水準にある東南アジアや、為替の影響を受けない国内旅行を楽しむという戦略でいきたいと思います。

上部へスクロール