足元で、国際商品(コモディティ)の総合的な値動きを示すCRB指数はリーマン・ショック直前の2008年8月以来の高値圏となっています。CRB指数は原油、貴金属、トウモロコシ、大豆などを含む19種類の商品で構成されています。
金や原油などのコモディティ価格は、世界の地政学リスクの高まりによって大きく変動します。今年2月下旬に米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まり、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡は封鎖されました。代替ルートであるバブ・エル・マンデブ海峡でも輸送が制限されています。日本は原油輸入の9割以上を中東に依存し、東南アジア諸国も約6割を中東に頼っています。そのため、アジアを中心にエネルギー供給の混乱が広がっています。
昨今の中東情勢の緊迫化とロシア・ウクライナ戦争の影響により、米国でもディーゼル(軽油)が不足し、平均価格が1ガロン6ドルを突破しています。ディーゼル価格の高騰で最も大きな影響を受けているのは米国の農家です。農業機械を動かすために、日々大量の軽油を消費しているためです。トランプ政権はこれを受け、国外への軽油輸出禁止を検討しています。
トランプ大統領の主な支持基盤はラストベルトと呼ばれる中西部の旧工業地帯や農村部であるため、11月の中間選挙を控え、この支持基盤へのアピールは重要です。私自身も大学時代に中西部のウィスコンシン州に2年間住んでいました。地元の州立大学では農家、特に酪農家出身の学生も多く、保守的な考えを持つ人が多い印象でした。
近年、世界的にナショナリズムの高まりが鮮明になってきました。ドイツ東部ザクセン・アンハルト州では極右政党であるAfD(ドイツのための選択肢)が躍進しました。AfDは反移民政策を掲げています。2015年の難民危機の際に、独メルケル政権がシリアやアフガニスタン等の国々から約100万人の難民を受け入れてから10年以上が経過しました。人道的な対応として一定の評価がある一方で、治安や社会保障の負担に対する懸念などから、ドイツ国内では多くの反発を生んでいます。また、欧州全体では依然として多くの不法移民が流入しています。
私が3年前に欧州をバックパッカーとして周遊していた際も移民の多さに驚きました。ベルギーの首都、ブリュッセルではチュニジア料理店など移民系の店が数多く立ち並び、多様なルーツを持つ人々が暮らす街であることを実感しました。
オーストラリアでも同様の動きが見られます。オーストラリアはこれまで、多くの留学生や移民を受け入れてきました。移民の増加もあって住宅価格が高騰し、国民の生活が逼迫しています。こうした不満を背景に、反移民を掲げる極右政党、ワンネーションの支持率が高まっています。
今の世界では多くの国が他国を支える余裕がないように思えます。米国はカナダに対して追加関税を課し、中国はレアアースの輸出規制を日本に対する外交カードとして用いています。こうした状況では、資源は大きな武器になり得ます。コモディティ価格の高騰は世界の分断を表していると思います。
資産運用においても地政学リスクはつきものです。一般的に、特定の国や地域の企業だけに投資すると、リスク(価格の振れ幅)は大きくなります。特にグローバリゼーションが転換点を迎えた今の時代では、分散効果は決して軽視できないと考えます。

